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民間の警備員派遣会社に勤めていて、派遣先は学校からオフィスまで様々。 欲というものが極端に少ない性格で、数少ない趣味としては写真を撮ることとKPCとのタンデムで遠出することくらい。 現在は血の繋がった家族はおらず、小学校三年生の頃に両親が他界し、親戚中をたらい回しにされた末にたどり着いたのが両親の友人であるナバナの家だった。 ナバナとは両親を通して何度か会っていたもののそこまで仲がいいわけではなかったが、一緒に暮らすようになってしばらく経ったころにした些細な理由による取っ組み合いの喧嘩をきっかけに、お互いの心のうちを話して悩みを打ち明け合うようになり仲良くなっていった。 そうしてナバナが接してくれたこともあってか、全くの他人である自分を実の息子のように受け入れてくれた射雲家にはとても感謝していて、中学に入ってからは新聞配達のバイトをしたり卒業後は就職して少しずつでも恩返し出来るように生きていこうと、そう思っていた。 しかし、中学卒業を一か月後に控えていた冬の終わりにナバナの家が火事に巻き込まれ両親は死亡、たまたま遊びに出かけていたことで火事に巻き込まれずに済んだ。ナバナと二人、燃え盛る家を前に強く手を握り合ってお互いを繋ぎ止めるようにして生き残った。その後ナバナは祖父母の元に引き取られ、親戚とはほぼ絶縁状態にある晶良は児童養護施設に入ることになり、就職と進学に分かれることもあって前よりも関わりは薄れていった。このまま遠のいていくのかと思った矢先、高校卒業を間近に控えたナバナから同居を持ちかけられ、少し驚きつつも二つ返事で頷き二人暮らしを始める。 元々一緒に暮らしていたこともあって、お互いに働くようになってからも変わらずつつがなく生活を続け、気がつけば九年の月日が経っていた。そんななんて事のない日常の中、久しぶりにそろった休日に二人でタンデムに出かけて帰ってきたリビングでまるで来週の約束をするかのように心中を持ちかけられる。 いつかはナバナにも大切な人が出来て家族を作って幸せになるんだろう、不幸があった分ナバナが幸せになる為ならなんだってしようと思っていたが、心中を持ち掛けられた時は「そっかぁ…」と不思議と納得する気持ちもあった。 生きてほしいと願わなかったわけではなかったが、それ以上に死ぬときに一人ではなく自分を連れていこうとしてくれたことが嬉しかった。一緒に生き残ったあの日から一緒に死ぬ覚悟は決めていたため、心中に迷いはなかった。 雪がうっすらと積もりつつある冬の日、いつも通りにナバナを後ろに乗せてバイクを走らせ、時折写真を撮って寄り道をして、そうしてお気に入りの草原に、手を繋いで寝ころんだ。ゆっくりと降り積もる雪の冷たさに遠のいていく意識の中で、混ざり合うように溶けていくお互いの手のぬくもりだけを感じて目を瞑り＿＿＿＿＿＿＿＿ 二度と開かれるはずのなかった視界に写った人工的な白と、太陽の温もりが肌を撫でる感覚に、零れるようにして涙を流した。 誕生日：5月8日 「お前と溶け合うように死ねたなら、それ以上の幸福なんてないとそう思ってたんだよ」 「白無垢」/キタニタツヤ 「冬のはなし」/ギヴン 通過シナリオ 「無辜の葬」

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