タグ： 理解者の呼び声第1回

あたしゃジュリアーノ・マディソン。周りの連中からはマディソンおばあちゃんなんて呼ばれとるよ。 あたしの生き甲斐はクッキー作り。それに尽きるね。 クッキー生地を捏ねている間は世間の柵から離れられるのさ。 誠意を以てクッキー生地を捏ねれば、クッキー生地も正直に応えてくれる。 人間よりよっぽど信用できるよ。 最近は屁理屈を捏ねる輩ばかりで気にいらないねえ。 屁理屈よりクッキー生地を捏ねる方が良いよ。 だがね、人間も本心を露わにする瞬間ってのがちょいとあるみたいなのさ。 それは美味しいクッキーを食べているときさ。 クッキーを食べているやつらの顔にはっきりと「おいしい」って書いてある。 いつもそれくらい純真で単純でいればいいのさ。 ところで最近は物騒なニュースが続くねえ。 先日もギャングの抗争があったそうじゃないか。 まあ、あたしのような堅気には関係ないけどねえ。 誰だい？「堅気は堅気なんて言葉を使わない」なんて言う奴は？ あたしは荒事が嫌いなんだ。そういうのは若い奴がやっとけばいいよ。 クッキー生地より重いものは持たない主義なんだ。 そういえば爺さんが亡くななって5年になるねえ。 爺さんはアーカム一のクッキージャンキーだったよ。 クッキーは爺さんの為に作り始めたようなもんさ。 「ジュリアーノ、お前を世界で2番目に愛している。1番はお前のクッキーだ」なんて言ってたよ。 つまらないジョークだよ。懐かしいね。 爺さんはある日書斎で死んでいた。 目立った外傷が無いもんで、服毒自殺という事になったがあたしゃ納得いってない。 現場には毒薬がなかったんだ。 爺さんの死には絶対裏がある。 …あれ以来、益々人間が嫌いになったよ。 そして、爺さんが死んだ理由を探り始めた。 結局何もわからなかったがね、オカルト方面には明るくなったよ。 ここまででわかってると思うけど、あたしゃ人間が嫌いだ。 でも、あたしのクッキーを求めて人が集まってくるのさ。 まあクッキーを食べてる奴らの幸せそうな顔は嫌いじゃないがね。 クッキーの訪問販売もやっとるよ。 でも人間は嫌いだよ。 最近ちんちくりんの医学生がやってくるようになってね。 悪い気はしないね。

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