タグ： デウス・エクス・マキナは死んだ

アルは「神」だ。 主である「偉大なる神」によって生み出された「神」だ。 アルに何か特別な力があるわけではないが、主はアルを気に入っていた。 そんな主に何か返せたらと思い、アルは主に仕え、主と共に世界を観測してきた。 アルが生まれてからも、新たに様々な「神」が生み出され、彼らは世界に爪痕を刻んでいった。 いつしかアルだけが逸話も残せず、人間たちに崇拝されないどころか、存在を認知されることすらなかった。 他の「神」はアルを出来損ないと嘲笑い、アル自身も情けなくなり、自分の存在価値を疑うようになった。 主は変わらずアルのことを気に入ってくれてはいるが、アルの存在を証明してくれることや肯定してくれることはなかった。 もしかすると、アルが主に気に入られていると勝手に思い込んでいただけなのかもしれない。 そう思い始めると、アルは何も信じられなくなった。 誰も僕を認めてくれない。 誰も僕を助けてくれない。 誰も僕を愛してくれない。 これまでも、これからも、僕は一人ぼっちだ。 そして、ある日、アルは人間になりたいと願った。 彼らはお互いのことを必要とし、必要とされながら生きている。 もし人間になれたら、こんな僕でも、誰かを愛して、誰かに愛してもらうことができるかもしれない。 この願いを主に提案したが、当然ながら許してはくれなかった。 しかし、しばらくして、主の伝達者から言伝を預かった。 人間が「神」を生み出そうとしていること。 それを殺せば願いを聞き入れてくれること。 ただし「神」であることを明かしてはならないこと。 誰かを殺めることには少し抵抗を覚えるが、こんな機会は恐らく二度とないだろう。 「神」として仕える主の願いを叶え、「人間」として生きるためならば、僕はなんだって殺そう。 アルは固く決意し、未知の空間へと踏み出した。 一人称：僕、二人称：君 ※名前は未来日記の秋瀬或から。作中で秋瀬或は、デウスエクスマキナに作られた「観測者」として、日記所有者の戦いを見届けてます。 アルも作られた存在であること、世界を観測してきたこと、など共通する点が多いと感じ、勝手にモデルにしました。 あと自身の存在証明すら疑わしいのに、「アル」(有る、在る)という名前なのが、運命が思うようにならない感あって好きです。

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