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「愛されることには失敗したけど、愛することなら、うまくゆくかも知れない。そう、きっと素晴らしい泡になれるでしょう」 ――寺山修司『人魚姫』より 街の郊外にある、カトリックとよのは教会の神父。普段は教え導くものとしての務めを果たすほか、孤児院の運営にも携わっている。早くに両親を亡くしているため、聖母マリアへの憧憬が強い。たとえ信仰が違えども、なにか困ったことがあれば相談や手助けを厭わない慈悲深い性格。おだやかで愛想のいい男だとして近隣住民からの信頼も厚く、孤児院の子供たちからも慕われている。やや潔癖。 しかし、聖人君子の皮を剥がせば、そこにはただの愛されたがりの子供しかいない。 四歳の頃に父親が事故死。精神的に追い詰められた母がとある信仰にハマってしまったことにより、ありふれた幸福な日常は一変する。殉教を尊び、痛みとともに生きろという教えのもと、過酷な洗礼と、信徒にそそのかされた母からの暴力を受けるようになったのである。息子を愛していた母親は当然苦悩するが、その葛藤すらも救済のための試練に過ぎない。押しつけられた煙草の痕も、真冬にかぶった水の冷たさも、滴る血も浮かんだ痣も、すべて愛なのだと刷りこまれていく。やがて十歳を迎えた百足草太は、とある教団の集団自殺事件が世間を騒がせたとある夏、カトリックとよのは教会の運営する孤児院にあずけられることとなる。 傷跡だけが残ったあの日々が理不尽なものであったことは理解しており、暴力や煙草への抵抗も強い。しかし、一応はキリスト教に改宗したという形になるが、かつて心身に刻みこまれた“教え”はいまだ根深く、痛みこそ愛であるという感覚から自傷行為を繰り返している。愛されたいのに、肉欲に溺れるには潔癖で、優しく撫でる手のひらに擦り寄ることはできないからどうしようもない。誘惑してきた月島シイラのことは心のどこかで軽蔑しており、人前でも彼女を避けるような素振りを見せるが、孤独であるという彼女を見捨てることができずにいる。 技能は、人の相談にのるための〔精神分析〕を。 2021/??/??　失楽のマルテュリア（HO：神父）

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