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小鳥遊 瑛斗(たかなし えいと) ​───────​───────​─────── バーテンダー 聞き耳、経理、心理学、説得、目星、精神分析、芸術、制作 KP判断で図書館許可 ​───────​───────​─────── クズ、が服を着て歩いているならこんな男だろう、という男。それが小鳥遊 瑛斗。 実に怠慢な性格で、仕事を最低限しかせずダラダラと毎日を過ごしている。 小鳥遊は画家になりたかった。幼い日に油彩の絵を見て感動し、自分もそうなりたくて美大に入るが、努力しても誰の絵にもかなわなかった。 50回目のコンクールで落選し、「カンヴァス張り替えていいか？足りなくてな」と力作の絵を講師に指さされ、絵の道を諦め美大を中退。 繁華街にて勤め始めた瑛斗は、初めはホストとして働く。 が、噎せ返る香水と仕事時間外の客からのLINEに嫌気がさし、バーテンダーに転職。 といっても、一度ならず二度の挫折が彼をクズに仕上げた。 カクテルを作るのは上手いし、高い身長は男性客がビビる為、イチャモンつける客相手には重宝される。 が、店の女や客から誘われたら断らない、それがバレてはいつもクビになる。 夜の街のオーナー達の瑛斗への風評は最悪なものだが、本人は知った事かと平然としている。 過去、一度結婚した。 美大時代から付き合っていて、中退する時に放ってはおけないからと結婚して、と手を取ってくれた女だった。 ホストになって帰りが遅くなっても待っている様な、健気な妻だった。 ホスト時代のある日、太客が一晩瑛斗を借りたいと言い出した。勿論枕だと、周りは察していた。 彼女と、目の前に積まれた札束を天秤にかける。 これだけの金があれば……。 一瞬の気の迷い。その晩、瑛斗は自宅に帰らなかった。 そして、寝ずに待っていた妻が明かりも付けないまま待っていた。 おかえり、も言わない妻。テーブルに置かれた離婚届。 瑛斗は黙ってそれにサインした。 妻の幸せは、これ以上自分と関わらない事だと思ったから。 「貴方の絵が、好きだったの。もう描いてはくれないのね」 別れ際、妻は言った。人から初めて、絵を好きだと言われた瞬間だった。 妻は別れ際妊娠しており、今でも最低限の連絡を交わす。娘の写真が添付されていることもある。 養育費は請求されなかったが、瑛斗は時折大金を妻の口座に振り込む。 人のクズに出来ることなんてその程度だ。 仕事をして、時折気が乗らない日はたとえ金曜や土曜であっても当欠して、ぼーっと家で煙草をくゆらせながら酒を飲んで適当に抱ける女や男を呼び出すようなクズが、娘に会えるはずもない。 元妻とやり直すことも、絶対にないだろう。 酒、煙草、仕事の雑さ、性の奔放さ。 爛れた生活を送りながら、時折思う。 自分には何が残されているのだろう。 広い部屋で一人、底辺の人生を送りながら煙草を吸う。 そういえば、旧友達はどんな生活をしているのだろうか。 出世街道に乗ったやつもいるだろうし、結婚して子宝に恵まれたやつらもいるだろう。 羨ましいとは思わない。 死にたいとも思わない。 ただ、このままじゃ生きていられないとはおもう。 生きれば生きる程、底なし沼に足をとられたように自分の人間性が悪くなっていくのを感じる。 思考がぐるぐると回る夜は、抱いた女が置いていった大量の睡眠薬を飲んで眠る。 沈み込む様に眠りにつく感覚が、底辺の人生を歩む今は、最上の幸せだ。

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