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クトゥルフ PC作成ツール
栗江 玲穏
ID:3407596
MD:eb3a0346ebebb057098489ac2aff03ee
栗江 玲穏
タグ:
歌手
DivalienPrincess
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生まれ・能力値
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その他増加分
一時的増減
現在値
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初期
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幸運
知識
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SAN
現在SAN値
/
(不定領域:
)
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技能
職業P
/
(うち追加分:
)
興味P
/
(うち追加分:
)
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初期値の技能を隠す
複数回成長モード
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<戦闘技能>
成長
戦闘技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
回避
キック
組み付き
こぶし(パンチ)
頭突き
投擲
マーシャルアーツ
拳銃
サブマシンガン
ショットガン
マシンガン
ライフル
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<探索技能>
成長
探索技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
応急手当
鍵開け
隠す
隠れる
聞き耳
忍び歩き
写真術
精神分析
追跡
登攀
図書館
目星
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<行動技能>
成長
行動技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
運転(
)
機械修理
重機械操作
乗馬
水泳
製作(
)
操縦(
)
跳躍
電気修理
ナビゲート
変装
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通常表示
<交渉技能>
成長
交渉技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
言いくるめ
信用
説得
値切り
母国語(
)
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<知識技能>
成長
知識技能
初期値
職業P
興味P
成長分
その他
合計
医学
オカルト
化学
クトゥルフ神話
芸術(
)
経理
考古学
コンピューター
心理学
人類学
生物学
地質学
電子工学
天文学
博物学
物理学
法律
薬学
歴史
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戦闘・武器・防具
ダメージボーナス:
名前
成功率
ダメージ
射程
攻撃回数
装弾数
耐久力
その他
%
%
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所持品・所持金
名称
単価
個
価格
効果・備考など
価格総計
現在の所持金:
、 預金・借金:
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パーソナルデータ
キャラクター名
タグ
職業
年齢
性別
身長
体重
出身
髪の色
瞳の色
肌の色
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その他メモ
2015特徴表:素早い、格闘センスの持ち主 年齢による能力値増減を採用 名前の読みは「クリエ レオン」 二万円詩聖との間に二人の子供がいる。なぜか高い所に登る習性がある。 「歌の星の王女様」というキャラ付きでデビューした本業歌手のマルチタレント。本人も事務所も今となってはそんなに初期の設定を気にしていないが、今でも同業の芸能人やファン達に「マジで異星人なんじゃなかろうか」と言われ続けている。 未だに子供と見間違われるほど幼い容貌、変化に乏しい表情、大人しそうな立ち姿、著しく小柄な体形とは裏腹に、最大声量の大きさと突飛な言動・行動で場の空気を支配し、無限の好奇心で「出来そう」「面白そう」と思ったことは一切遠慮せず暴れ回る嵐のような本性を持ち、別にそれを隠そうともしていない生粋の自由人。性質の悪いことに常識の破り所を熟知しているので場を白けさせることはほぼなく、その振る舞いに魅了される人間が多い一方で、彼女に直接振り回されまくった結果トラウマが出来た者も少なからず居る。 バラエティ番組などへの露出はかなり多く、最盛期には及ばないものの今でもテレビに沢山出ている。歌以外の活動の幅が非常に広いことでも有名で、声優やファッションモデルや様々な種類の楽器やダンスなど、とにかく自分が興味を持ったことならばなんでも飛び付き、その自在の身躯と精神をフルに使って遊び尽くす。その結果として、彼女は多岐に渡る分野で人々からの尊敬を集めてきた。 強烈な印象に隠れがちだが、長い芸暦の中で成長し続けた歌唱力は誰もが認めるほど高く、また後進を育て上げることにも熱心に取り組んでいる。彼女の生き様を構成するパーツの中で、自由と歌は同じくらい重要な役割を占めているらしい。 話にならないくらい昔のことだけど、その日のことは今でも鮮明に思い出せる。 私にしちゃ珍しいことで、変に不貞腐れてた夜だった。その時住んでた街の、料理も変わり物娯楽もドリンクも粗方味わい尽くしちゃった気がしたからだ。私はそう思ったらすぐ別のどこかに行ってしまうことにしてたけど、いつまでそれが続くんだろうって思い始めた。 一つの場所に飽きたら別の場所へ。そこにも飽きたらまた別へ。この国に飽きたらヨーロッパかどこかへ。大陸を変えて、手段を変えて、それを死ぬまで。全部を楽しむには私の人生は多分足りなくて、全部を一回ずつ触るだけだったらとても満足できやしない。それに、どっちのやり方を選んだ所で、私について来れる人間なんてどこにもいない。 生まれた時から抱えてる好奇心と孤独の内、どっちかを満たしてもう片方は諦めるってことをしたくなかった。現実を見ればそうすることの方が正しかったとしても、だ。私が自由であることは、私の精神が見た目と同じく子供だってことの一番の証拠になってて、その時の私は不気味にそれを誇ってた。 冷たい空気が吸いたくなって、人目に付かないところから建物をよじ登って屋上に出た。期待通りに澄んでる空気に包まれる。建物の間を飛び移るようにして、ぞっとするほど静かな朝焼けの中を進む。私のすぐ横を追い越してカラスが飛んでいくのをじっと見送る。反対側から別の鳥が飛んでくるのを見つけた。 違う、あれは鳥じゃない。なんだあれ。はんぺんみたいな影で、すごく遠くに居るのに目で見えるくらい大きくて、飛ぶというか滑空してる。で、自らを巧みに操って障害物の間を滑らかに抜けて、こっちに向かってくる。そんな物体を見たことは今までに一回もなかった。 それが一瞬で私の横を過ぎ去る時、私は風圧に耐えながらその顔を見た。人間だった。風の抵抗を利用するムササビのようなスーツを着て、暗視ゴーグルで目元を覆っている。あんなスピードで危険な飛行をしてるのに、何も恐れてないように口元を結んでただ前を向いている男。 考えるよりも先に走り出した。その筈なのに男との距離は信じられないほど開いていた。考えうる限り最良のルート選択に、この世で最も恐ろしいパルクールを組み合わせても、とても追いつけそうな気はしない。でも私はそれに挑戦した。願いが天に通じたのか、幸いにも向かい風が吹き始める。男はそれをまともに食らって失速し始めたし、私は風に逆らって走ることに慣れてる。距離がほんの少しずつ縮まっていった。いける。追いつける。追いついてどうするってことでもないけど、あれの隣で走れるチャンスはこの一回しかない。理由ならそれで十分だ。相手は後ろから追いかけられてることなんて気付いてすらいないだろうけど、私は一瞬のうちに奴に夢中になってた。 興奮で忘れることもできないくらい、足の痺れと肺の疲れを感じた。距離が開いていくことに焦ってばかり居たら、ついに足元が狂った。この高さのジャンプじゃ向こうのマンションに届かない。つまり落ちる。どれくらい落ちるかは分からないけど、とにかく落ちる。重力に全身を掴まれる直前の私は、内側から破れそうなまでに一瞬で息を吸い込んで、訳もわからず男に向かって呼びかけるように叫んだ。 目を覚ますと、そこは病院だった。完璧に死んだもんだと思ってた私はとんでもなく驚いて慌てふためき、静かにしてくださいと看護師さんに叱られて、大人しく説明を受けた。あの時の私は、命からがらベランダの端っこを掴んで落下を免れていたらしく、発見者に引き上げられた時には既にショックで意識が朦朧としていたらしい。その状態でも生き延びれるんだ……私すごい……生物すごい…… 聞けば、私を見つけて救助した人が同じ病院の中で待っててくれてるとか。そりゃあもう私ってば有名人ですからね。まあ良いや、会ったらお礼言わせて貰お。 え、あそこにいるの今朝のムササビ滑空男じゃない? 絶対そうだわあの微妙な顎ヒゲ、私の目を誤魔化せると思うなよ。 話しかけてみたところ、どうやら私を助けてくれたのは他でもない彼だったらしい。後ろから叫び声が聞こえて引き返してみたら死に掛けてる人を見つけたので、うまく減速してベランダの中に転がり入って、ぐいっと引っぱり上げたんだとか。なんだそのイケメン行為。よく見たら死ぬほど顔良いじゃん。こんな完璧超人いるんだ…… ショックと軽い打撲を受けたものの入院が必要なほどの傷はなく、その日の内に帰宅することが出来た。もっとも、私はそうせずに暫くその男に付き纏っていた。男の名前は「二万円詩聖」って言うらしい。何その苗字。 思っていた通り、詩聖と遊んでいる時間は私にとってとても愉快だった。どこへ行くにも自分の足を使った方が速いし楽しいと思ってた私が、まさか他人の肩に乗っかってゆっくり進みながら大笑いする日が来るとは思ってなかった。 酒の勢いで、私は「あんたほどの美男子だったらさぞ今まで沢山の女の子落としてきたんだろうなあ」なんてひどく不躾なことを言った。詩聖はそれに頷いてみせた。続けて、大切にしている女性たちを一人一人感慨深そうに紹介しながらずっと感謝して、自分との間に生まれた子供のことをどんなに可愛く思っているかについて語り出した。私はそれを聞いて、素直な人だなあと思った一方、こうして私という新しい女と遊び歩いてることの不思議な放蕩さに笑った。いいなー子供。私けっこう寂しがり屋だかんな、互いに理解し合える仲間になってくれるような子ほしいなー。……あ、良い事思いついたわ。 そうと決まれば話が早い。ここ最近早寝早起き心掛けてたけど、今日ばかりは夜更かししちゃおう。 あいつ寝た?ありゃ完全に寝てるわ、大いびきかいてら。よし、悪いけどちょっと頂きますか。今日お酒のノリで「着床率99パーセント」なんてえげつない下ネタかましてくれたね、本当かどうか試してやろうじゃないの。 本当だったんだけど……嘘でしょ詩聖…… まあいいや、もちろん覚悟してなかったことでもないし。とりあえず控えておいた連絡先から報告してみよう。赤ちゃん授かったよー、あんたと私の。当初の思惑通りすっごい驚いてた。まあまあ安心してくれたまえ、私が自分の判断でやったことだよ。たぶん私は夫婦二人での子育てなんてやっても絶対お婿さんと意見が割れるわけで、そうなるくらいなら最初から自分一人で育ててみようってわけだ。で、現に奥さん作りまくっててお子さんも沢山いらっしゃるあんたにおかれましては、私にこんな暴挙働かれても、文句の一つも言えないでしょう。ふっふっふ。 大丈夫大丈夫、私これでも結構人望あるから。頼れるところはいろいろ頼りながら、先輩さん方の意見も聞きつつ、うまくやってくつもりです。あ、それはそうと今度遊びに行かない?ちょっとアルコールも副流煙も絶ちたいし、早寝したいから午後十時半くらいには帰るけど。あ、そう?わかった、そんじゃーねー。 あれから詩聖は、私が思っていたよりも私の体調を気にかけてくれたり、時間を見つけて会ったりしてくれていた。良い男かよこいつ。そりゃ慕われるわけだわ。何はともあれお腹もだいぶ大きくなって、性別が女の子らしいことが分かったころ、そういえば私の両親になんにも伝えてないことを思い出した。まあメールでさらっと言えば良いや。……え? 良くない? ちゃんとご挨拶に伺わないと最悪サブマシンガンとかで一族郎党殺される? えっ、めっちゃ真面目……尊敬するわ…… それでもメールで軽く概要を伝える必要はあるわけで、その時点でわりとドン引きされた。普通に考えたら、自分の子供が会って一日の男の寝込み襲って妊娠するの全く訳わからないだろうな。今気付いた。 ご挨拶当日。錯乱したママが切腹前みたいな真っ白い服で玄関に出てきた時はさすがに心痛んだし、パパの「お前の考えは本当にどうなってるんだ」って言葉の切実さには何も返せなかったけど、詩聖のトークスキルがヤバくて最後のほう全員爆笑してた。何がすごいって一つも嘘とか誤魔化しがなかったのが一番すごい。っていうかここに来て自覚しました、私とんでもないことしてるね。ちょっとだけ反省します。 にへらにへら笑って語せるところまで時系列を飛ばすと、まず赤ちゃんがとてもかわいいってところからになる。聞き分けが悪いっていうか、そもそも聞き分けというものが存在しないの最高だと思う。私が人間に求めてるもの全部詰まってない?これ。はぁーーー美梨穏ちゃん……私の手で最強にしてあげるからね……今はお眠りなさい…… 一人で歩けるようになった一ヶ月後辺りからなんかおかしいなって思ってたけど、彼女もしかしたら既に私の手に負えないかもしれない。大変だぁ。今から元に戻そうとしてもちょっとどうにもならない気がするぞ。上等!!!! 行けるとこまで行かせちゃおう!!!!! でもそれはそれとして一回詩聖のとこ連れて行ってみよう。会いたいって言ってたもんね。 たまーに電話とかはしてたにしろ互いに忙しかったわけで、顔合わせるのも大分久しぶりだった。あんた背でかくなってない? 気のせい? 気のせいだったわごめん。ふと美梨穏ちゃんに目をやると、詩聖を見たまま何やら呆気に取られている。わかる、この人でかいよね。勝手に登っていいよって言いたいけど危ないからまだ駄目。 昼の間は奥様方や子供たちと交流させてもらった。平均して非常に強烈で最高だった。これは是非とも仲良くなりたいところ。我が子は我が子で向こうの方から爆笑が聴こえる。なにやってるんだろう…? どうやら二万円家のお手伝いさんが美梨穏ちゃんのお世話をしてくれるらしいので、旦那さんを借りていく了承を家の皆様からしっかり頂戴した上で、詩聖連れ回して夜の街で遊ぶことにした。この辺のお店全然知らないけど、まあこいつに任せればなんとかなるでしょう。 そして実際になんとかするんだよ詩聖という人間は。程よくうるさくて良い雰囲気の居酒屋とか風変わりなコンセプトがあるバーとかにやたら詳しく、実際いろいろ勉強になった。というか忘れてた、詩聖と腹割って話す~みたいなことしようと思って誘ったのに、ファン対応とか酒とかに集中しちゃって全然話せてない気がする…… ってことをうっかり口に出してしまったせいで、その日の最後のお店が静かでちょっとお高いレストランみたいなところになってしまった。どうしよう。私、ドレスコードとか全く気にしないからこういう場所飛び入れたことないんだけど。と思ったらオーナーさんが詩聖の顔馴染みの人だったので顔パスだった。さっすがぁ。 まず最初に、子供を持つにあたっていろいろな手助けをしてくれたことに改めてお礼を言う。何イケメンみたいな返事してんだこの人。むしろ人が良すぎて心配になってくる、元々私にしか責任ないことなのに。すごいなぁ。何食べたらこういう人間になるんだろう。こういうお店の料理とかかなぁ。 で、本題。子供もう一人ほしいなーということをそれとなく言ってみる。まあ、一回目の例の宣告の時に比べると動揺は少ない。そりゃイージーモードだかんね今回。 理由はというと、私の勘が「私と美梨穏ちゃんのこれからは第二子の存在があればもっと良くなる」と言っているから。なんで今回は合意を得ようとしてるのかというと、合意を取ったほうが良いから。うん。合意は取ったほうが良い。 二つ返事くらいの速さであっさり賛成された。そっかぁ、なんであんなに家族たくさん居るんだろうなって思ったら、こういうところかぁ。えっ、今更だし私が言えたことでもないけど、ちょっと危なくない?この人。相手が私だからか?相手が私だからだろうな。どっちにしたって餅は餅屋、こんなことに付き合ってくれる人間は他にないわけだ。 しれっと今までは子育てとお仕事を両立させてたけど、ここらで一旦お仕事は休止しよう。無理すんなって色んな人に怒られたし、元々そんなに体強くないしね。思い返してみると、かなり変わったなぁ。私。 かわいい女の子が生まれたー。名前は彗玲那ちゃん。今度はあんまり私から理想を押し付けてしまわないように気をつけるけど、この子も育つにつれ最強になっちゃうだろうなぁ。私の子だもん。かわいい。子煩悩が倍になった。 ところでこの姉妹、物の見え方や思考が成長していく一方で、もちろん身長もぐんぐん大きくなっていった。もしかして私の背丈抜かされる? 子供って普通に親を超えていくもんなんだなぁ。とは言え私の影響を受けていくことも確かだろうし、たぶん私はその事を自覚しといた方がいい。別に何かを自重するわけじゃないけど。こんな具合で、物思いを増やしていく度に気が早いことばっかり考えてるのがこの時期だった。 あと、彗玲那ちゃんがとても大人しい子に育っていってる。それは私の電波を間近で受けてなお落ち着いていられるということでもあり、顔つきを考えても将来大物になりそうな感じがする。美梨穏ちゃんに至っては、そろそろどうにかしないとって想いをこの私に抱かせるくらい奔放になっちゃって、まさに願ってもないことだ。すごいな子供たち……このままだとそう遠くない将来には追いつかれてる……私もがんばろう…… 美梨穏ちゃんが六歳、彗玲那ちゃんが四歳になったころ。二人分の子育てはまあまあ忙しい上に気を遣う任務であり、ふと最近の自分がほとんど歌声を出せていないことに気付いた。ここで「それも仕方ないかぁ」とはならないのが私の良い所。とりあえず今まではどうとでもなってたから考えてなかったけど、ここらで私の苦労を減らす手段を見境なくバンバン取り入れて、出来た余裕で芸能界へ電撃復帰しようと思い立った。歌うことそのものよりも、音楽を通じて人と通じ合うっていうことが一度不足してしまったので、もはやカラオケボックスくらいではどうにもならない。一方で休みの日しっかり作れば子供たちとも遊べるし、まさにいいことづくめ。 ……いつもそうだけど、私は物事を思いつくまでがちょっと遅い。でも仕方ない、思いついたのがいつであっても、内容がなんであっても、思いつくことそのものは止められないし、そうなれば私は止まらないのだ。ということで我が子らよ、これから暫く私は仕事があるので、一緒にいられる時間が減ります。その間あなた達はパパのお家で遊ぶことになると思います。私がどうにか言いくるめます。 ごく短い話し合いで了承取れちゃって面食らった。もちろん私もタダで預かってもらおうとは思ってないので、必要になりそうな費用をざっと計算した上で三倍にした額を資産から持ってきて、使い方に制限かけたりもしないまま受け取ってもらうことにした。普段金遣いに気を遣ってるタイプのスターはこういう時に有利だ。とは言え、受けた恩をちゃんとした形で返せる機会がこれまで少なかったことと、単純に私が詩聖を応援してること、子育ては掛かる額以上の苦労があることだからとか、ここにはもろもろ含まれてる。たぶんこれでなんとかなるでしょ。じゃあ後はよろしく。君のイケメン発言、これ以上聞いたら私の立つ瀬が全くなくなるからもう帰る。ホントに明日復帰の発表するし会見もするから、よかったら身内としてニヤニヤしながら報道楽しんだりしてください。 子どもについて、二歳差の姉妹二人ということは番組収録や取材の中で話してあるけど、それ以外は写真とかも含めてなるべく明かさないことにした。私の娘っていうステータス、たぶんすごい重い十字架になるでしょ。それはよくない。 あーでも自慢したいなー。うーん。ちょうど新しいシングルへのモチべ高まってるし、そういう曲にしようかな? でも、あんまり露骨だと何年か後に恥ずかしがられそう。知ってる人が聴いたら分かるくらいにしようか。それだったら誰も文句言えまい。ついでにB面詩聖にしよう!!!ネタがたくさんある!!!! 然しもの二万円詩聖もまさか自分モチーフの曲作られたことは……いや全然ありそうだなあいつ…… 空白を片っ端から埋めるようにしてたくさん活動した結果、CMソングのお仕事もらったりドラマの主題歌任されたり、あちこちの音楽番組で取り上げてもらったりもしたので、一時期のテレビでは私の歌が頻繁に流れるようになった。娘たちと遊んでる時にもそのタイミングは訪れるので、これ私だよーと自慢したりするわけだ。で、その度に美梨穏ちゃんが「私たち、これお母さんがやってるってことはもうわかってるよ」とか悪意なく言ってくる。そんなに冷たいこと言わなくていいじゃん。それはそれとしてごめん。 一方その頃、彗玲那ちゃんは音楽への興味を少しずつ強めていった。この歳だったら普通のことかもしれないけれど、私の目からすると「好みの傾向こそあれど食わず嫌いはない」という今の彼女の楽しみ方はとても良いことだと思うのだ。なるべく長いことそのままで居てほしいなぁ。厄介な拘りできちゃってもそれはそれで面白いから大歓迎。 美梨穏ちゃんはどちらかと言うと詩聖の方に懐いて、よくちょっかいを掛けにいく子になった。私があの子の中でどう扱われているのか、詳しいことはよくわかんない。けど、私と美梨穏ちゃんは実際ずっと仲が良い。私がそうしたがったからかもしれないけど、対等でいられる距離感が昔からずっと続いていて、互いにとって楽しいことでたくさん遊べた。きっとこの子は誰にでも同じことを出来るだろうし、私と同じように色んな人から好かれたり嫌われたりするだろう。そしてこの子はそういう物事を、ひょっとしたら私を凌ぐほど意に介さないかもしれない。 彗玲那ちゃんは昔から誰かを惹き付けることが得意で、一方で誰かに惹き付けられることにも長けてた。お友達が出来るごとにますます面構えが良くなっていったし、いつだって良い方角に向かって進んでく力に満ちてる。私は彼女に自ら何かを教えようとしたことが無かったけど、一つのテーマを二人で一緒に考えることは沢山あったし、それは間違いなく私の為にもなってた。新しい発見を繰り返して、未確認のアイデアで溢れていて、昨日よりもっと洗練されたものを手に取る感動の体現者。いつまでも応援してます。 詩聖が言うには、出会った当初と比べると私自身も少しずついい感じになっていってるらしい。言われてる私にはさっぱり自覚がないわけだけど、両親との連絡が昔より増えたりだとか、友人との距離が新たに縮まったりだとか、誰かと一緒になって何かをすることが多くなったりだとか……考えてみると、私自身によるものかもしれない好転はいくつかあった。かもしれない。 彼が私の言葉を待ってるっぽかったので、思いついたことをそのまま喋ってみる。と言っても、「人は変わる」程度の他愛ない話だ。一つずつ言葉にしていくと、自分が昔に比べて変化したこと、それが新しい経験の影響だということ、その多くは他でもない詩聖にもたらされたこととか、案外すんなり頭へ入ってきた。詩聖はそれを聞いて……聞いてるのかお酒の味に集中してるのかわからないけど、とにかく繰り返し頷いてた。なんというか、随分老けてるなぁ。……私が言えたことでもないか。 私は背中のほうにうなだれながら上を見てぼうっとして、この薄い退屈に加える新しい刺激を探した。 いや詩聖、何を頷いてるの。そんな場合じゃないでしょ。 私が急に大きい声を出したので、彼はちょっと当惑した。 ええっとね、私がとうの昔に諦めてたことを思い出したんだよ。「諦めてた」ってのが全然よくないから撤回するし、今この場であんたに言う。長ーい不満だけど全部聞いて。 私が覚えてる限り……私が詩聖と出会ってからだけど、あんたは本当に全く変わってない。近くにいた私のいろんな部分が変わっていったのが嘘みたいに、何一つ。服装とか態度とか落とした女性の数のこと言ってるんじゃないし、かと言ってその時から全部完璧だったって話でもない。 言ってしまえば、詩聖って私の重すぎる期待ほどには自由な人じゃなかった。いや、行動は自由そのものだったけど、頭の中が。自分自身を追いかけて、自分自身に追われてる感じ。そうしなきゃいけない理由があるみたいに一生懸命だったし、周りの誰にも見えない何かをずっと見てて、誰にもそのことを教えない。家族について喋ってる時は特にそう。ずっと笑顔だけどへらへらとはしてなくて、愉快そうに見える頭の裏側で何か考えてた。 初めに気づいた時は「私の知らない問題があるのかな」って思った。その時の私はすっかりあんたをヒーローみたいに見てたから、すぐに全部片付いてもっと素晴らしい姿を見せてくれるって、期待するのか願うのかわからない感じでね。 で、今日までそれを放っておいたけど、結局どうにもなってなさそうじゃん。かく言う私もすっかり忘れたまんま、一緒にお酒呑んでさっきまで哲学未満を話して、にまにましてたわけ。今までずっと詩聖に助けられてきたし、その恩がまだ返し切れてないってずっと思ってて、思い出しちゃったから今こうやってまくし立てて、口を動かしながらあんたのために出来ること探してるの。……ちょっとくらいアルコール回ってるんだろうなぁ私。 あー、誤解されたくないから言っておくと、今の詩聖が駄目なやつだって言いたいわけじゃないよ。むしろ他の何者とも比べられないほど凄い人だし、きっとこのままでも家族と沢山の幸せを作れるし、一つもヘマ起こさないまま笑って往生できると思う。 ただ私のお決まりの身勝手が、「自分の手で嫌なこと全部ぶっ飛ばしてしがらみ取り払って新しくなったあんたとも遊んでみたいな」って思ってるだけ。あんたほど強い……あらゆる意味で強いやつが未だに片付けられてないことって一体なんなのか想像も付かないけど、どうにかしようとするんだったら私も混ぜて。 だって、娘二人は私が手を加えるまでもなくどんどん進化していきそうだし、私は私で足りなかったものもう全部手に入れた気分だから、後はあんただけでしょ。私ね、あんたの助けになりたいって思ってるのと同じ分だけ、ただ手持ち無沙汰なんだ。やっと気付いたの。月並みな表現だけど、正気の沙汰じゃいられないんだよ。生まれた時からね。
※
歌詞を引用、及び記載することは禁止となりました
(Youtubeや歌詞サイトのURLだけ書くことをお勧めします)。
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