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「いつも私に尽くしてくれるお母さんが私は大好き！」 「こんなに愛されている幸せ者な私は、幸せでいなきゃ！」 あくまで彼女は“能動的”であり その行為は全て“自主的”である。 女の子なんだし文系を選んだら？ 髪を染める？あまり派手な格好はやめたら？ 将来は地元で教師をするのはどう？ほら、ここの大学の教育学部とか良さそうよ。あぁ娘が教師になるなんて、誇らしいわ─── ───塾代とか学費とか、お金のことは気にしないで！愛の幸せがお母さんの幸せなんだから！お母さんは愛のためならなんでも頑張れるんだよ。 その真綿はあまりにも優しく愛の首を絞めた。愛自身でさえ知覚出来ない程に。 本当は理系科目の方が好きで、得意であった。特に全てが規則的な法則で成り立つ原子の世界、化学の美しさに惹かれ、それを学ぶのは苦ではなかった。 しかし母親の「女の子なら文系の方がいいんじゃない？」という言葉を聞き、彼女は“自主的”に文系を選択した。母親の言葉はいつも正しい。母親はいつも私を思ってくれているのだから、間違っているはずがない。たとえ間違いだとしても、愛された故なら構わない。 結果として文理選択後から成績は右肩下がりとなり、本来の偏差値より下の大学に入学することとなった。 ルームシェアは大学入学をきっかけとして、家賃を節約し親孝行するために自主的に始めた。 現在は周りとの熱意の差に葛藤しながら国語の先生を目指すレールの上を揺られている。 かすみに対しての感情は、基本的に好意的だ。 幼い頃は自分の家にかすみを招き、2人で古ぼけたテレビゲームを何度も遊んだ。あの頃は楽しかった。余計なしがらみも何も考えずに、ただ日々が幸せだった。 しかし疲れきった真夜中に彼女の寝顔を見た時、自分よりずっと地頭が良くて理系で、なのに大学行かなかったかすみに対してぐるぐるとしたものが込み上げてくることが、たまにある。 でも彼女はそんな感情に気づかないように、「私“は”愛されている」「私“は”幸せだ」と頭の中で唱える。その言葉が単なる己の鼓舞から発せられている訳では無いことは彼女も認識していた。 ───「かすみちゃん、おうちの人がお酒沢山飲んだり、すぐに大きな声を出したりして大変みたいね。先月もお父さんが顔赤くして高級居酒屋街へ入っていったってママ友から聞いたし…あぁ“かわいそうな子”。“そんな子”と仲良くして“あげてる”なんて、愛は優しい良い子ね。」─── あぁ、なぜ幼い頃の母親の声が聞こえてくるのだろうか。 かすみはかわいそうな子。 私はそんな子と仲良くしてあげている優しい良い子。 そんなこと、一度も思ったこと無かった。私はかすみが好きだからかすみと遊んでいただけだったのに。 坂下愛は夕ヶ原霞に中身で勝ることがないと悟っていた。 そして同時に己の方が恵まれて幸せであるという固定観念が、深く根ざしていた。 嫉妬に憐れみ、そして優越もひとつまみ。誰にも見せられない、泥水のような感情。 そんな夜を見ないふりして、彼女は今日も“幸せ”に生きている。 “恵まれた”愛は“かわいそうな”かすみより、幸せでいなければならないのだから。 『ぶっちゃけここ読んでくれればおっけーコーナー』 ・母親と共依存気味 ・なんでもYesだけど操られてる意識は無いし、母親も操ってるなんて露ほども思っていない ・かすみは好きだけど越えられない(先天的要因)、だけど超えなくちゃいけない(後天的要因)と思ってる。だから時々苦しい。 ・そうとしか考えられない時分が嫌いだしこの感情は絶対に墓場まで持っていく ・枕元には旅行先での両親と自分の笑顔の写真が飾ってある ・日々の幸せを書き綴った日記を本棚にいれてある ・幼い頃に母親から貰ったうさぎのぬいぐるみを机の端に置いている

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