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殺し屋：遺書屋を始めてからは「三縞 シオリ」と名を改めている。 一人称→私 二人称→君、あなた、～さん 綾辻 綴→綴 綴の世界観を壊さないように、仕事(殺し)のときはアウトローな女を演じている。 お金の管理も生活習慣も普通だし、どちらかというと”良識”がある。が、仕事(殺し)に関しては過去のことなどもあり、タガを外していないと狂いそうなので自分で見ないふり気づかないふり気にしていないふりをしている。 最初に綴を脅してしまったことを後悔している。けれど綴なら自分の力になってくれるとも思っていたし、実際一緒に逃げるという選択をしてくれたことに感謝している。 人を殺した事実は変えられないから、その業は全力で背負っていく気でいる。だからこそ、汚れ仕事は全部自分が負うと決めているし、綴のことは身を呈して庇うつもりでいる。 実入りのいい殺し屋をしているのも、将来綴がお金に困らないように、と思ってのこと。没収されないように、法を搔い潜って、隠している。 もし警察などに捕まることがあっても、直接手を下したのが自分だけなら、綴は脅されていたと言い訳できるかもしれないので。仕事で演じているのは綴の世界観の助けになるようにと思ってのこと。 ほんの少しだけ。殺し屋というのは殺しの依頼があって初めて成立する仕事だと思っている。 利用されているだけかもしれないが、もし過去の自分のようにのっぴきならない理由で自分に害をなす人物から逃れるために自分のような存在を必要としていて、自分を頼ってくれるのなら、自分の心も救われるような気がしている。　 ◆仕事の仕上げをすること、綴を守ること 父子家庭だった。母は小学生の頃に交通事故で死んだ。父も同じ交通事故に巻き込まれた際、足に障害・左半身に軽い麻痺を負ってしまった。 駆け落ち同然だった両親は親類と付き合いがなかったため、身体の不自由な父の介助を自発的に行なっていた。母を想って、父は塞ぎ込みがちになっていた。 高校に入学してから家計の助けになればとバイトを始めた。家に帰る時間が遅くなると、父は「ひとりきりの時間」にたえきれなかったのかアルコールに逃げるようになった。バイト代も酒代に消え、酔った父は不満と遣る瀬なさを怒号で発散するようになった。そのうち歯止めが効かなくなったのか暴力も振るうようになった。父が苦しんでいることはわかっていたので、逃げだそうとは思わなかった。 辟易としてきた頃、バイトと勉強で疲れ切っている夕飯時、父の怒号と暴力が襲ってきた。「もうお前も嫌だろう、こんなやつの世話なんかするのは！　そういう顔をしてるのはわかっているんだ！　お前に哀れまれるほど俺は落ちぶれていない！　お前は俺の子だ、子どもは親に反抗するな！」と支離滅裂な言葉とともに、首を絞められた。無理心中のような気配が受け取れた。 けれどここで怒りが湧いた。 苦しみもわかる。悲しみもわかる。同情もする。唯一の肉親だし私の扱いはどうあれ、生きていくというなら手伝いは惜しまないし、もし母のあとを追いたいというなら止めようとは思わない。だけど、私の命をぞんざいに扱うのは許せなかった。母が〝生まれることを望んで産んでくれた〟ことを蔑ろにしたくなかった。 そこからはすっと頭が冴え、左半身に軽い麻痺のある父に首を絞められても払い除けることは簡単だったし、足に障害のある父を振り切って台所にある包丁を持ってくることは造作もなかった。 それから父を一心不乱に刺した。いろんな感情が泡のように浮かんでは消え浮かんでは消えていた。ただひとつ脳裏にずっとあったのは〝こうしなければならない〟ということだけだった。 どれほど時間が経ったか、息絶えた父の前で呆然としていると、幼馴染みの綴が様子を見にうちへとやってきた。 綴へ ごめん。 なんかもう、この一言に尽きるなって思う。 私が初めて人を殺してしまったとき、心配して来てくれた綴に縋って、脅してまで傍にいてもらおうとしたのがそもそもの間違いだったね。私だけが背負えば、あの時にすべて終わっていたと思う。 けどどうしても寂しくて、耐えきれなくて、綴の優しさにつけこんだ。ごめん。 一緒にこんな世界に来させてごめん。その代わり、ちゃんと綴のことは守るよ。綴がもしこの遺書を読んでいるなら、私は自分で決めたことを守れたってことだよね。そうならいい。 私が死んだのなら、綴はもう自由に生きて。全部私のせいにしていい。ううん、全部私のせいだから、最初に私が綴にしたみたいに「ずっと脅されていた」って言って、警察とかに保護してもらってね。独学だけどちょっとだけ法律のことも調べて、綴にできるだけ罪のないように行動してきたつもり。ちゃんと役立ったらいいな。 今までごめんね。今まで、ありがとう。 この遺書は読み終わったら、燃やしてください。　止織。 ネタバレ セッションの度、<CON×5>に失敗すると体の節々が痛む<HP-1>。これは死ぬまで続く。

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