タグ： 寒色卓

小学生の頃、叔父が熱心なキリスト教(カトリック)で神父だった。叔父のことが大好きだった彼は次第にカトリックの教えに惹かれるようになり中学校にあがる頃にはキリスト教徒になっていた。両親は特に信仰しているわけではなかったがそれもまた1つの考え方として受け入れていた。 毎日熱心に教会に通い、神父である叔父の背中を見て育った事もあり大きくなるにつれて神父になることを夢見るようになった。 叔父の推薦もあり23歳で神学校に入学、6年後無事卒業し叔父の元で修行をすることとなる。 修行の最中、とある1人の女性と出会う。彼女は同じキリスト教で教会で出会った。共に惹かれ合うようになったが、神父は結婚ができない。神父になることが夢だった彼は諦めるしか無く、彼女は一つだけプレゼントを渡すと去っていった。プレゼントは鞄だった。革製の少しいい鞄。鞄を見て彼女を黙って見送ってしまったことを後悔しながら過ごしていった。それから6年後、無事神父になった彼の元に4〜5才の子供と1人の男性が現れた。その2人は彼が惹かれた女性の夫と子供だと言う。夫の口から聞かされたのは彼女が2年前病気で亡くなったということ。彼女からの手紙を預かっていたので渡しに来たということ。手紙を受け取り、1人自室で読んでいると大粒の涙を零す。 そこには共に居た頃の思い出話など色々書いてあり、最後の1行には「愛していました」の一言。彼はこの手紙をみて、一度だけキリスト教徒でありカトリック教徒であることを後悔した。 彼は神に懺悔をし彼女からの手紙と彼女と共に撮った唯一の写真を持ち歩くことに関し許しを乞い、いつも手帳に忍ばせている。 それ以降は恋をすることも無く、神父として叔父の意志を継ぎ迷える者達を優しい言葉で導いている。

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