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物腰柔らかで紳士的な男性。不安定な人に寄り添う時に自分が狂っていちゃいけないと、どんな時も慌てず焦らず、冷静に穏やかに過ごすことを意識して過ごしている。正義感と献身の心が強く、自分の身や精神を砕いて人々に寄り添い心の治療をする上、滅多に取り乱さずニコニコしているので周りから無理していないかと心配されるが、本人曰く「影で自分をしっかりと労わっている。自分を大切にできなきゃ他人を大切にすることなんか出来ないからね」らしい。お気楽者とも無茶をする人とも言われているが、本人の持つ知識と精神医療の能力と患者と話す話術は本物であり、経験と努力、そして才能を認められ評価もそれなりにある。 そんな彼は、誘拐されたいと思っていた。 誘拐されれば、恐怖を味わうことが出来る。 誘拐されれば、誰かが自分を絶対に見てくれ、誰かが忘れてくれる。 そう、誘拐されれば。 この身を、精神を。 酷い目に遭わせてくれると思っているから。 彼が精神科医になったのは後悔と使命、そして野望があったから。 後悔は、妹を救えなかったこと。 使命は、人としてある為に善を貫くこと。 野望は、自身の本当の欲望を満たすこと。 影井家は正義感が強く、秩序を守り人々を救う意志、善の心を持つことを重要視する家系だった。彼はその価値観を一番、誰よりも、真剣に大切にする人だった。 だが、それは表の姿であり、影井家には裏の姿があった。表と対なるものが裏ならば、善と対なるものは『悪』。彼らは人の狂気を愛し、人の精神を蝕み嗤う"加虐性"を持つ人間だった。 表の顔は周りからの評価をあげ、信用と信頼を掴む為。つまり、裏の顔を隠し人々に紛れる為であり、狂気を見るために人々と繋がる手段と狂気の質をあげる方法であった。影井家は前者が主な理由でこれまで悪の心を殺すために"人らしく"あろうと過ごしてきたが、朱斗の4つ上の兄である『赤也』が跡取りになった時点でそれがひっくりかえることになってしまう。 赤也もごく普通の教育をされてきたつもりだったが、何かのきっかけで人の狂気を求め愛するようになっていた。元から波長が合わず避け気味だった為、その理由も経緯も思惑も何もかもが不明のまま、跡取りに決まった彼が家族の中心となった瞬間、家族の形と過ごし方が全て【(人の)狂気を得る】為のものとなってしまった。人への加虐嗜好など無く、正義と善の心を大切にしていた朱斗にとって、それは許し難く"屈辱的"なものだった。何よりも、その後に生まれた6歳下の『紅音』に関するものが"気に入らなかった"。 紅音は生まれた時から影井家の評判を維持・向上させる為の道具として扱われていたため、家族の中でも特に厳しく教育され自由も尊厳もなかった。紅音を強く支配していたのは赤也であり、赤也自身が持つ欲求を満たす生贄として生かされていた。最初こそ気づかなかったが、自分にはしなかったキツい態度や躾を紅音にするように強要してくるようになったり、歳を重ねて心理を理解出来るようになってから"不満"を抱くようになった。 そんな彼女を救いたいと、一度真実を伝え逃がそうとした時があった。結論から言うと赤也にバレ、失敗した。 だが、そのお陰で知ってしまった。全てを狂わせるものを抱いてしまった。 赤也はその時、とても不機嫌だった。恐らく彼の計画を、自身が一番見たかったものを自分に奪われるのが嫌だったからだろう。 だから、彼からお仕置をされた。 自身の存在を否定し価値を失わせるほどの罵詈雑言。生を放り投げたくなるほどの暴力。 全身に走る鋭く重い痛みと、心臓を握りしめられるかのような心の苦しみは、その体と心を酷く傷つけ、"快楽"を得るものだたった。 その時に初めて気づいた。 影井家の心の底にある加虐性は自身には全く無い。そう思っていた。 だが、それは間違いだった。加虐性は確かに自分の心にあったのだ。 ただ、それが他人へ向けるものではなく、"自分に"向けるものだっただけ。【被虐性】こそが、自分のもつ裏であり悪なのだと自覚した。 あぁ、そうだ。 自分は赤也に加虐性を強制されることが屈辱的だったんじゃなくて、赤也の加虐性を自分に向けられないことが屈辱的だったんだ。 自分は紅音の扱いが気に入らなかったんじゃなくて、赤也や家族の興味が紅音に持っていかれたのが気に入らなかったんだ。 自分は紅音に対しての扱いを乱暴にすることに不満を抱いていたんじゃなくて、紅音が自分にも赤也に虐められ、自分以上の苦しみを受けるのが羨ましくて不満だったんだ。 いつだって、他人のことを思っていたんじゃなくて、他人の狂気を見たかったんじゃなくて 自分のことを思って、自分に狂気をぶつけて欲しかったんだ。 だから"ここ"にいて、負の感情ばかりを湧かせていたんだ。 この身を虐める為に。この精神を苛める為に。 気づいたのならば、もっともっとこの快楽を得るための方法を探さなくてはいけない。 その為には人の狂気を常に自身に向けられる必要がある。いつものように自身が信じる正義と善の心を利用できるものと言えば？ その答えが、精神科医だった。 あの後、紅音を"救えず"赤也とこの家族の真実を知ってしまった【後悔】を埋めるために。 いつしか家族を恨み復讐に来るかもしれない紅音に沢山虐め殺してもらえるように、彼女が一番嫌う"家族の表の顔"を演じる【使命】を全うするために。 他人の狂気を直接浴びることが出来る。 自身が一番"病的"で自身を"大切"にしない人間なのに、精神科医だという皮肉が付きまとうのが心地いい。 いつか患者を助ける為でなく自分の欲を満たすためだけに呼んでいたという本性がバレ、責め立てられる未来が恋しい。 そんな【野望】を果たすために。 いつしか、自分の何もかもを壊してくれる日を夢に見て。 今日も彼は壊れた誰かの傍に寄り添う。 特徴表 46【寄せ餌(D)】 人間以外の怪物に好かれやすい。誘拐されれば殺されずに監禁されるか、もっと酷い目に遭うこともある。DP:40(組み付き10、精神分析30) 66 【急速な回復力】 新陳代謝能力にすぐれている。耐久力を回復するロールの結果に+1。 カラーコード#ed514e

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