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上谷美津、メイクアーティストである。 芸能界でアイドルや俳優、モデルなどのメイクを担当している。 自他ともに認めるメイク技術を持っており、専属として雇いたいという事務所がひっきりなしだが、美津は断っている。 美しくないものに興味はないと言い、仕事としてはメイクをするが、専属になる気はないとフリーで活動している。 好きなものは美しいもので嫌いなものは汚いもの。 かつての悲劇により美津は専属で雇われるのを美津は拒否し続けた。 美津は元々あるアイドルの専属メイクアーティストであった。 そのアイドルは若くし、人気もそこそこあるアイドルで、ファンサービスもしっかりと行う健気でとても純粋な娘だった。 だが、そんな純粋さを疑う者も出てきた。主にマスコミ関係者や同業のライバルだ。 陰口やありもしないゴシップの性でそのアイドルはふさぎがちになり仕事も減ってしまった。それでも、かつての純粋で健気だったあの美しい頃に戻ってほしいと美津は付け焼刃と分かりながらも、寄り添い相談に乗ったり、精神科医に相談したり、独自に精神病について学んだ。 だが、その日は突然やってきた。 アイドルの娘が首を吊って死んでいたのだ。美津はその場に立ち尽くした。自分のしてきたことは無駄だったのか、なぜあんなに美しかったあの娘がこんなに醜くひっそりと自殺しなければならなかったのか。 自分の力のなさ、世間の汚れている様を目の当たりにした美津はこの世にはいられないと思い始める。 あの娘が死んでからまたマスコミが湧いたり、さんざん陰口を言っていた同業者のアイドルが「親友だったのに」と都合のいい言葉を並べる。 美津は吐き気がした。この世はこんなにも汚れていたのか、その汚れた世界に自分はいたのかと美津は思いある決断をする。 「あたしはあんたを引き立てるために腕を磨いたの…。今更他の連中に浮気するつもりはないわ。あたしもそっちに行っていいかしら…」 海も枯れるまで～ロスト

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