タグ： 白波

生前は6人兄弟の次男だった。 幼くして親を亡くし、6人兄弟で決して楽な生活ではなかったもののお互いに助け合い、穏やかに暮らしていた。 ―――そんな生活が長く続くはずがなく、一番上の長男は戦争に駆り出され戦死。「死体は長男の意志”に”より、アンデッド化を希望。引き渡すことはできない」と最期に別れも言えず仕舞いになってしまった。 形だけの葬列には5人しかおらず、とても寂しい葬式だったそうだ。 次に姉が疫病にかかり、薬代を稼ぐためロキを中心とした4人で必死に仕事を探した。元気で血の気の多かった三男は無口になり、大金を持ってくるのと一緒に怪我が増えた。 態度は冷たいが優しかった四男は日に日に淀んだ目をするようになり、腕には何かの注射の痕が増え、壊れていった。珍しく太陽が出るよく晴れた日に首を吊っているのをロキが見つけた。まだ幼い妹と姉には言うことができなかった。この日、初めてロキは嘘をついた。 人手が足りなくなりながらも妹とロキ、三男の3人で頑張っていた…が、薬代には届かず、ある日ロキは幼い妹と姉を残し、金を稼ぐために身を売った。 尊厳も何もかも失い、ボロボロになりながらも薬代を手に入れることができた。薬を買ってからはしばらく穏やかな日々を送っていたが、ゴロツキからリンチに遭い三男が死亡。 姉も再び病が重くなり、薬代を稼ぐためにロキは”自分”を軍へ売った。 ロキが自分を犠牲にした対価は姉に届けられ―――なかった。ほどなくして姉は軍の人間によって殺され、健康そうな妹はESP研究所へと入れられ、多大なる精神的ストレスに耐えられるわけもなく自我崩壊。しかし、面白い事に死んでからESP能力に目覚め、制御装置がないままESPの波を漂っていた。 これに目を付けたのがエンブリオたちだった。不運にも、脳だけ生きていたロキの肉体に妹の脳の一部を移植し、実験は成功した。 ロキが再び目覚めた時、周りは荒廃し、残骸と化した研究所と周りに転がる不気味な死体たちだけだった。 この時から彼は、すぐ近くにいるはずの妹と、すでに亡くなった姉を探しまわる哀れな存在へとなり下がったのだ。

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