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彼は親がおらず、物心ついたときから施設にいたが機は一転した。彼が小学校3年生に上がったばかりの時の話である。神宮寺グループという大手医療品メーカー社長が下の息子の競争相手に、と施設から彼を引き抜いたのだ。 彼に与えられた仕事は、社長息子の次男(以下「坊っちゃん」と称する)の勉強の面倒を見ること。それからゆくゆくは側近として危険から坊っちゃんの身を守ることだった。 彼は見限られまいと勉強も訓練も努力した。坊っちゃんとの仲は、はじめこそ妙に大人びていて近寄り難く感じていたが、今まで友達というものを作ったことがなかったというのを本人から聞いて、すぐに仲良くなった。それに伴うようにして学力もすぐ追い付かれることになったが……悪い気はしなかった。むしろその成長っぷりに関心したといえる。 坊っちゃんならこの会社をより良いものにしていくことが可能だろう、とどこか誇らしげな彼だった。神宮寺家のしきたりは十分知っていたが、願わずにはいられなかった。 「あの人が社長になる日がくるといいな」 叶わないその願いを嘲笑うかのように、事件が起こった。坊っちゃんが大学生になったばかりのことである。坊っちゃんの兄君が学内で不祥事を起こしたという。しかもその罪を坊っちゃんが被ったのだ。坊っちゃんから「これが僕の役目だから。」と一言告げられたが、納得できるはずがなかった。かと言って、社長に抗議などできない。そのような立場にいなかったし、一応恩義もある。それに、坊っちゃんから引き離されるようなことになっては本末転倒だからだ。成す術なしかと思われたが、数日後、坊っちゃんから事の真相を教えられる。兄の不祥事は坊っちゃんを陥れるための罠だったというのだから頭が痛い。そんな自分とは裏腹に、にこにこと腹黒い笑みを浮かべている坊っちゃんを見て、何か策があるのはすぐに分かった。聞けばこの会社を去ると言う。思わず唖然としてしまった。が、坊っちゃんに着いていかないという選択肢は端からない。 そんなこんなで現在、坊っちゃんの探偵事務所に助手として勤めている。助手と言っても、事務所には坊っちゃんと自分の二人しかいないので、経理や雑務、炊事等を担っている。 [余談] 坊っちゃんは探偵「阿久津 社」として名乗っている。この名は彼が考えた。というより、彼が読んでいた"月 桂樹"という作者の「霊は眠る」という作品に登場する探偵の名から取ったそうな。 【通過シナリオ】 ・きさらぎ駅 ・テロメアが啼いた 【後遺症】 ・シャンの寄生 一週間に一度SANc1d6/1d20 発狂時強制殺人癖

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