タグ： Anubis ムーンレスナイト

　国会議員の息子として何不自由なく暮らしていた彼は期待に応える人物だった。親の期待、社会の期待、友人の期待、その全てに応える彼は品行方正で将来有望だとされていた。 　だがそれは唐突に終わりを告げた。ある日を境に彼の周りで争いが起こるようになったのだ。初めは些細な夫婦喧嘩や友人同士の喧嘩だった。だが、それは段々と規模を大きくし、終いには家庭崩壊、学校崩壊の混乱にまでなった。ただ、それは決して彼を傷つけることはなかった。まるで彼に操られるかのように、暴れて怒り狂い、全てを壊していった。 　暴動はどんどん拡大し、街一つが封鎖されるまでになった。その頃には彼もこの『現象』の正体と、『力』の使い方が分かるようになっていた。自分を取り巻く全てを壊していった暴乱が、自分の望んだものだということに気づいたのだ。心の奥底で親の束縛や社会のしがらみといったものからの解放を望んでいた彼はその能力でもってして、そのしがらみを引きちぎってしまったのだ。 　この騒動は直ぐ様UGNの目に触れることになり、彼は『暴乱の教示者（ライオット・チューター）』や『扇動者（サバイバー）』と呼ばれ、これを直ぐ様鎮圧するようにとUGNエージェントハートマン先任軍曹（コードネーム『完全被鋼弾（フル・メタル・ジャケット）』）に指令がくだされた。 　葛谷自身は戦闘能力を持たないため、いとも容易くハートマンに殴り倒され、そのままUGN施設でとことんシゴキ倒された彼はハートマンの、 「じっくりかわいがってやる！　泣いたり笑ったりできなくしてやる！」 　という宣言通りに感情に乏しい一見機械ような人間になってしまった。もっとも、それは自らの衝動を社会という殻に押し込めた結果であり、無理やり作った性格だ。意図的に抑えこまないと周りの人間を扇動し暴走しかねない状態なのだ。 　自分や他のオーヴァードは衝動を抑えなければ社会生活を送ることができない病人（けっかんひん）だと考えており、自制の出来る普通の人間を尊敬している。 その為、衝動を抑えようとせず暴れるジャームを嫌悪しており、場合によっては感情を表に出して「化け物」と侮蔑することもある。

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