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彼の名は、織田鎧亜（オダ ガイア） 戦国武将である織田信長の家系に属し、生まれた時からその血は濃く、幼少の頃から物事を導く能力を発揮していた。 スポーツに関しても、その力は発揮され、弱小チームを全国大会優勝チームに登らせたともいい伝われている（当時小学6年） 中学に入り、より一層力を増した。 学級委員長に就任後、同学年の統率力をあげ、ランク付される、運動会、合唱会、文化祭と1年で3年を抑えての３冠を獲る。それからの中学三年間は全て獲ると共に、中学全体の頂点。生徒会長を好成績で終わらせ、全国模試7位、体力テストS（満点）、学校の歴史の8割を塗り替えた。 これまでの功績で驚くことは耐えないが、一番驚かれていたのは、自衛隊養成高校に入学したことである。もっと上の高校に行けるとも言われ、多くの推薦を受けたが、｢人を守りたい｣と一掃。 自衛隊になることを決意した。 そこでの生活は、壮絶を超えるものだった。 だが、その決意は固く全力を尽くしてやり遂げる。卒業時にはすでに、大佐になることは確実と噂されたほど。 その後の人生もうまくいき、五年後には結婚し、家庭を持つ父になっていた。 だが、ある日。 軍曹にとって、人生分岐点となる出来事が起きる。 妻が交通事故にあい、半植物状態に陥る。 治療を繰り返すことは出来るが、回復の余地はないと言われた。 その絶望は、これまで超えてきたどの壁よりも高く、険しいもの。 加害者が誤りに来たが、まともに返すことも出来ず、恨むことも出来ず、そして 涙も流すことも出来なかった。 流したかった。涙を だが泣いた。涙のない泣き方を初めてした。 その後、自衛隊の本部に戻るなり、筋トレの繰り返し、食事は最低限しか取らず、ただただ無表情のまま、全てを過ぎ去るのを待っていた。 そして気づけば、30。それに気づいたのは、昇級式のとき。軍曹に上り詰めた時だった。 その時に見た光景は、自分を見る部下の目、一斉に起こる拍手の数。 そこで七年の月日を経て 久しぶりに流した涙が頬を濡らす。 軍曹になってから、いろんなことに目が行くようになった。 部下の相談事、指導の事、食事の内容。 今ままでしっかり見てなかったものを見るようになった。 そして、交通事故から15年。 いつも通りの病院への道は、いつもと違う表情を浮かべ、足を進めていた。 受付を終え、病室に向かい、 笑顔で言う寂しい一言 ｢ただいま｣ ｢おかえり｣ ｢え？｣ その先から聞こえた、少し高い声。 昔に比べて、弱々しい声だが 一度愛した声は、ちゃんと覚えていた。 ベットに駆け寄り、カーテンを開ける。 そこに居たのは、肉が落ち、骨が浮き出た体。 今にも折れそうな体を起こし、こっちを見て、浮かべる顔は、何度も何度も見てきた笑顔。見飽きるほどに見た笑顔。 いつ見ても、大好きな笑顔。 軍曹は、また泣きかけた。涙を目に浮かべるが必死に耐え、笑顔を作る。 無理でもなんでもない。 ただただ、自然と作れたその笑顔で、また ｢ただいま｣ と、返した。

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