タグ： 作：dikxon

「私、海が好きなんだ。あなたはどう？」 　出身は山に囲まれた田舎であるが、幼少の頃に家族で行った海の美しさに心を惹かれ、それ以降、近くにある木々よりも、遠くの海に心を寄せて育ってきた。山を愛する兄とは馬が合わず、いつも喧嘩していたが、高校卒業と共に家を出て海洋学校に進学する。 　海に対するすさまじい情熱を秘めた彼女は、大学を優秀な成績で卒業すると、実家に戻るよう連絡してきた家族の誘いを無視して 海に面した水族館の職員として働くことになった。 　しかし、デフレの影響により客足が遠のき、水族館は閉館の危機にさらされてしまう。 そこで、閉館の危機を脱却するために、新しい目玉となる海洋生物確保の為、自前の船を操り、日本中を駆け巡っている。 ・17/08/27 夜空を行く列車 目が覚めると宇宙を掛ける列車の中にいた、不思議な雰囲気をまとう少年の協力により、やけにリアルな夢から覚めることが出来た。 一度目が覚めると夢の内容は忘れてしまう方だったが、最後に感じた悪意のある声や恐怖心をあおる存在感は忘れることはなく、 その日は、夢であった刑事と少女の存在が気になり、仕事に手が付かなかった。 ある日の昼下がりの休憩時間に、夢の中の少女が水族館に遊びに来ていた。どうやらママと再会できたようでよかった。 声をかけて無事の確認をしようと思ったが、その行為はあの夢が本当にあったことを証明し、今は笑っている少女の顔を曇らせることになりそうで、その日は結局、彼女たちが退館するまで声をかけることが出来なかった。 ・17/09/03 Revenge・of・Life 目玉となる海洋生物の確保のために立ち寄った港町。 めずらしいものは取れなかったが、釣果としては上々だったため、久しぶりに船上ではなく、近くのホテルに宿泊することにした。 日が沈み始めた夕暮れ時、習慣になっている漁具のメンテナンスの最中に意識が遠のき、次に気が付いたときには別の空間であった。 呪いによって動かなくなった同行者を担ぎ、命かながら現実世界に帰還したが、そのために支払った代償は大きかった。 深淵の底から自身を見つめるモノにより、同行者と同じく体が硬直する呪いを受けただけでなく、その醜悪でおぞましい姿により 精神を侵された結果、２か月もの間他者とのコミュニケーションがとることが出来なくなり、現在の職を離れることになった。 長期の治療により徐々に心身は回復に向かっていたが、心残りであった水族館を見に行った際に状況は再び悪化してしまう。 ・・・すでに取り壊しが開始されていた水族館がそこにはあった。 元々経営が苦しくあったが、自分が入院したことが悪質なな労働条件からくる過労であるとマスコミが報道されたことが、 とどめとなり再建する機会を与えられることがないまま、閉館することになったと聞かされる。 自身の身勝手な再建方針を推し進めた結果、守りたいものを守れず、居場所をなくしてしまった『深卯』は 今日も暗く閉じた自身の殻に閉じこもり、日々を過ごすことになる。

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