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何の変哲もない女子高生、だった、少女。 程々に快活で、程々に友人も多く、楽しく普通の生活を送っていた。 人生の歯車が狂ったのは、旅行先でジャーム事件に遭遇してから。両親が死んで、自分も死に瀕して。 皆を助けるために、歌に力が宿ったと思った直後から記憶がない。 気づけばUGNに保護され、可哀そうな一般人被害者として記憶処理が施され、両親はそばには居なかった。 そして、彼女は、自分の声を失っていた。 言葉を紡ごうにも、口からはたどたどしく言葉の断片が漏れ出るのみ。 その声はカエルをつぶしたような、醜い声。誰かと会話をするには、あまりに不向きな喉。 それを実感した時、彼女は心を閉ざす決心をした。閉ざさざるを得なかった。 仲良くしていたあの子の視線が、腫物を触るようなものに変わっていたのを、これ以上肌で感じるのがたまらなく嫌だったから。 ただ、彼女の歌声はとても綺麗だった。言葉を紡ごうとした途端たどたどしくなるその喉は、歌になるとその世界を変える。 世界は煌き、色付き、見せる光景は美しいものへ。それだけが彼女の世界を守る唯一の救いであり。 そして、彼女を化け物たらしめる力そのものでもあった。 その後は、出来るだけ知ってる子たちと同じ学校に通わないように、昔から憧れだった聖ウルギリ女学園に入学した。 自分の声を知られないように、｢普通に｣過ごすために。勉強さえ頑張っていれば、きっと｢普通｣になれるって信じて。 憧れの制服に袖を通して、勉強を頑張れば皆に認めてもらえるって、誰かとまた仲良くできるんじゃないかって。 ……彼女の人生は｢埋没した｣普通のまま、誰にも見つからないように、日々を過ごしている。 なお、この後音楽の授業があると一発でバレる模様。

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