タグ： 秋乃

私が五つの頃、才覚を発揮し始めた時分だった。ある日、鷹のように愛される、そのような意味を込めて鷹愛と名付けられた。同時に兄も名を与えられた、できの悪い鳶だそうだ。私の名は兄と比較して付けられた名だったものの、煩わしくてしょうがない。 私が九つの頃、兄が縁日に連れて行ってくれた。同い年の女の子が付けていたお面に見惚れていたら、兄が買ってくれた。安物を身につけさせるなと捨てられたけど、直ぐに拾って洗った。私にとっては何よりの宝だ。 私が十一になった頃、兄が家を出て行った。誰も追わなかった、追おうとしたけれど、家の者に止められた。きっと私が不甲斐ないせいだ、私に愛想を尽かしたから出て行ったからに違いない。でも、何をどうすれば...そうだ、淑やかになろう。そうすれば兄も生まれ変わった私を見て戻ってきてくれるかもしれない。淑やかにならねば……ならなければなりません。 十四の春、兄を待ち続けて二年と半、妙な感覚を覚えました。まるで私が人の域を越えたかのような...そして天啓を授かりました。待つのではなく追えば良いと。以前とは違い私には溢れんばかりの力が満ちております。これならば家中の者も止められません。 十四の秋、玉野椿という方と出会いました。力の使い方を教えて下さるとのことでしたが……そんなことに時間を割く暇などございません、少し潰れて頂こうと思ったら捻られました。負けてはいません、油断しただけです。 十五の春、緑が色付き始め、生命の息吹を感じる頃合いになりました。今日は椿様から初の任務を言付かりました。年増からの命令など...いえ、不要なことに時間など割きたくはありませんが、これも兄様を見つけるため。風の噂でほーくあいと名乗るえーじぇんとがいるそうで、鷹を愛するという正に私を愛するという名を冠しているではありませんか。兄様の予感がします、がなぜか一切情報が回ってきません。偶然会う可能性もありますので任務にそれとなく励みます。会って喜ばれるかはわかりませんが、それでも兄様に一目お会いしたいのです。

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