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『それ』を遠目で見たものは、大きすぎるぬいぐるみを背負った少女、または小さな少女を抱きかかえた獅子のようだと思うだろう。しかし、こちらに気づいた『それ』が『獅子の頭部を目深に被り』、四肢で地を駆けその鋭爪を振り下ろされる直前に、己の認識の誤りに気づくのだ。『それ』は少女でも獅子でもなく、獅子の皮を纏う少女の形をした化け物だったと。 人で作った屍者が生者よりも大きな筋力を発揮するとしたら、人で作った屍者よりも動物で作った屍者の方がより大きな筋力を発揮するだろうと言うのは当然の発想だった。画して、動物の屍兵(以下屍獣)の開発がなされたが、ただでさえ不安定な屍兵であるのに、互いの心を理解し尽くしたとは言い難い動物の屍兵化は、制御系の面で大きな壁に直面する。幾つもの試験体が生み出されては失敗作として廃棄され、屍獣の製作は困難かと思われたが、ある『画期的な制御系の開発』により造られたのが『BBシリーズ』である。 その『画期的な制御系』とは『比較的心を通わせることが出来る動物の飼い主を屍者化し、屍獣の制御系として埋め込む』というものであった。屍者と屍獣は神経を接続され、屍者の体はほぼ原形のまま屍獣の腹部に埋め込まれた。 そうして造られた新型の屍獣、『BBシリーズ』は『飼い主』の理性により『ペット』の凶暴性を抑えつつ、効率的な野生の暴力を戦場で奮っていった。 BB-217の『ペット』、ナイツは大きな獅子だ。生前は美しかったであろうその毛皮は、長年敵の返り血を浴び続けたために赤錆色に変色していた。『ペット』の腹部には大きな穴が開き、そこに『飼い主』にニイナが埋まっている。二人はニイナの脳と脊髄からのびる人口神経で繋がっている。人口神経は血管のようなもので覆われていて（宇宙戦争のあれみたいなやつ）、ニイナの頭部からは頭髪ではなくうねうね蠢く管が伸びている。 ナイツの四肢にはファスナーが付いている。ナイツの体は着ぐるみのように脱ぎ着でき（体からのびる管が痛そうだが）、平時はナイツの頭部と腕を脱いでいる。ナイツ全部を脱ぐことはあまりない。人口神経はそんなに長くないというのと、長期に渡ってナイツの足で歩いてきたためニイナ自身の足で歩くのが面倒になっているから。 戦闘時はナイツの腕にニイナの腕を埋め込み頭部を目深に被る。基本は【かぎづめ】で戦う。噛みつくとニイナの頭が汚れる。ニイナはそれがあまり好きではない。

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