タグ： 北しら

2015の職業、メイド、使用人。 ▼ 　人口が減り、人が人の世話をする必要も無くなった時代に於いて時代錯誤な職業についている。 　明確な技術、また的確な処理はロボットがこなした方が効率が良いのは間違いないと理解しつつも、一定数それに馴染めず拒否をする人間の世話に当たる職業。主にご老人か酔狂な物好きの相手。 　根本的に人の世話をするのが好きだし、手で行うアナログな作業を特に好む。 　家事、料理の腕はプロレベルではないけれど基礎知識はあるのでほどほどにこなせる。時たま味付けがブレたり料理の形を崩してしまったりするけれど、ご老人方は文句を言いながらも「まあ失敗するのが人間よね」とまんざらでも無さそうに食べてくれる。 ・取得趣味技能について（戦闘技能、図書館、歴史） 　災害で娘夫婦を亡くした一ツ木の祖父母もその類の人種にあたり、幼い頃よりアナログな作業を教え込まれてきた。ハイテクなことに少し疎い。 　「機械に頼るな己を鍛えろ、いざと言うときは足で逃げろ」と渇を入れる祖父と、 　「手に技術が無ければいざと言うとき手段が減るし、何よりおなかがすくのは悲しいことよ」と微笑みながら料理を教えてくれた祖母に育てられた。 　市場や世間からは無くなってしまった紙媒体の本だけれど、祖母が大事に持っている古いふるい本や、手書きのボロボロのレシピノートが宝物。 　必然的に祖父母と過ごす時間が長くなり、過去の話や歴史的な物事の話を多く聞いている。 　そんな大好きで大事な家族だった祖父母が亡くなった。 　穏やかな祖母が先に旅立ち、祖父も追いかけるように同じ月に亡くなった。 　その葬儀や手続きを済ませ、心にぽかんと大きなクレーターが空いたような気分だったが、遺品を片付ける際に見つけた祖父母の手紙で「貴方と見る月が綺麗ですね」というあまりにもストレートで奥ゆかしいものを発見した。料理をしながら、月にはうさぎが居るだの、汽車で月に行って旅がしたいだの、ころころと鈴が転がるような声で笑って話した祖母の姿を思い出した。 　いけるなら月に行ってみたい。と思っていたらいけることになった。

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