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　数ある騎士の家系の中でも唯一、女性が強く、その技術と家督を継いでいる一族の生まれ。 父母兄の四人家族。 幼い頃から剣の使い方を叩き込まれ、花よりも戦いに身を置いていた。 兄よりも強く、他の近衛騎士たちにも負けず劣らずなその力量に、誰もが彼女を騎士として認めていた。 が、母はいまだに現役で領地を守っており、自分はその領地の騎士団の部隊長と身分はあまり高くない。 中流貴族。 　未婚。売れ残り。かつては許婚がいたが、結婚前に死別しておりいまだに新しい相手を見つけていない。 社交界では、女性優先な家に継ごうと思うような男がいるはずない、だとか、許婚が忘れられず貞淑を守っている、だとか、 様々な憶測がささやかれている。 そして、そんな身の硬い彼女を落とした勇者となろうとする数奇な男もいれば、逆に高値の花だとやっかむ男もいるようだった。 家族は、そろそろ結婚して家督を継いでも良いのではないかとも思っているが、許婚と彼女がどれほど仲が良く、慕い合っていたかを理解しているため、本人が何か言うまで何も言わないでいる。 教会へは、幼い頃から何度か足を運ぶことがあたが、許婚が死んでからは割と足しげく通うようになっている。 HO4の司祭とは、たまたま礼拝していた時に声をかけられ、仲良くなった。 　＜＜不幸な過去＞＞ 　彼女と許婚は、いわゆる幼馴染であった。 幼い頃から家族ぐるみで仲のいい、彼女の一番の理解者であった彼を、彼女は心から信頼し好意を寄せていた。 しかし許婚との結婚を控えていた１６のある日。 許婚は彼女へのプレゼントを買って街を歩いていた際、馬車の前に飛び出した少女を守ろうとして事故に遭い死んでしまう。 事故を聞いて駆け付けた彼女の目に映ったのは、傷だらけの遺体と、壊れたバラのネックレスであった。 事故の理由を聞けば、彼らしいと彼女はどこか冷静に納得してしまう。 いや彼女は、いとしい人の死の衝撃よりもそれ以上に心を奪われてしまうものがそこにあったのだ。 それは、まるで人形のように白く透き通った彼の肌と奇跡的に傷一つなく整った愛しい人の顔。 そして不意にこんな思いが脳裏をよぎってしまう。 「人は死んでからが一番美しいのではないか」 初めはほんの好奇心。 しかし引き寄せられるようにして死んだ彼へと口づける。 彼の唇へと移った自身の口紅がバラのように咲いた瞬間、彼女の心は完全に壊れていた。 　それからというもの、彼女は死体を見つけてはその美しさに心を奪われ、あわよくば盗み、着飾り、愛しい人を重ねては口づけをするようになってしまう。 美しさは男も女も関係ない。 死体であれば、彼女にとってそれは「愛」の対象なのである。

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