タグ： ポプラの杜 大正クトゥルフ

　○○大学医学部教授で吾国としては珍しい精神科学を専門としている． 　痩せ型で皮膚の色は瀬戸物のように生白く，薄く細い眉に西洋人形のような大きい目をしている．隆々と聳えた鼻と現代から見てもシャープな輪郭に囲まれた顔は当時の日本人とは異なった気質を感じ取れる． 　軍医を目指すべく，医学生時代に独逸への移住経験があり，数年前に友人から貰ったハッフマン製の懐中時計を肌見放さず持ち歩いている． ↓以下背景設定 　心霊術や加持祈祷のような大正後も根強く残る従来の非科学的な精神医学を批判し，科学の基礎に立脚した新しい精神病治療の研究に勤しむ．過去の行為や趣味から純粋な記憶を揺り起こし，脳髄の正常を目指す『迷妄からの解放』と名付くる学説を提唱し，精神病科教室に設けた病棟で『迷妄解放治療』の実験を続けている． 　その背景には，独逸移住中に世界政策の気運が高まったことにあった．清教徒の正気を保障する神の非存在が証明された一方で，異教徒の狂気を保障する法典は政府に形を変えて跋扈し，連合の一文字も掲げられない世界と，自分自身がそれに遵う奴隷の一人として唯物史観的な思想を撒布すべく盲目的に富国強兵を謳い軍医を目指していたことに失望する． 　ただ，迷妄からの解放は現代を支配する常識のレールに則った手法であることから，結局のところ，秀三に繋ぎ止められた首輪と奴隷の烙印は消えることはなかった．

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