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「彼は神からの罰を賜りましたが、それが分かっていてもなお、その一座をわたくしは許すことができません。神は一体、何故彼へ罰を与えてしまったのでしょう」 日本には八百万の神がいる、とよく言われますでしょう。ありとあらゆるものに、神は存在します。 日本では山ひとつを「座」と数えます。何故なら山とは神が座る場であり、人間という矮小な生き物がその足元を汚してはならないからです。山の頂きから見下ろす風景は、座する神のみが見ることが出来るのです。ですからわたくしは登山に関してえらく反発をしていた。彼がわたくしの前に現れるまでは。 彼からの登山への誘い、そして彼の思いを聞いたわたくしは考え方を少し変えました。「神は、全ての生命、即ち生きとし生けるものに対して生も死も等しく与えます。それでもなおその座を目指すことを、神は試練を与えながらもお許しになるでしょう」その時彼が微笑んだのを覚えています。 ですが彼は死にました。彼が頂へ向かおうとしていた山は彼を拒んだのです。自然が。山が。神が。彼を頂きに立つことを許さなかったのです。 生きとし生けるもの、その全てに平等な神は、もしわたくしがその座を目指すためにこの足で踏みしめても、静かにわたくしを見守り、そして試練を与え、運命を変えるのでしょう。 そんな彼女の思想とは裏腹に、身体を動かすことが好きで、最近はボルタリングなどをやっているらしい。

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