タグ： 朝雛氏DX α世界線

「…君たちは、誰の特別になりたいんだい？」 心から思った言葉であるのに、我ながら空虚なセリフを述べたものだと嘲笑する。 今からボクは死ぬ。他でもない、ボクが救った、救ってもらった彼女の手で。 「ボクも誰かの特別になれたかな…、いつか、なれるといいな…」 心の底からというならまさにこれだろう。 「いつか」なんて永遠に来ないこと、それを一番わかっているのは他ならぬボクだ。 …ああ、痛いな。頭蓋を割った鉛玉。そして銃声が脳に響いてとても不快だ。 深く、深く眠りにつこう。 彼女の泣き顔を見たくないんだ。 　　なんだ、こいつは。 　　　　これは 　　　　　蛇 「所長！ブラムの意識が覚醒しました！」 …ここは？というか、なんだ？ 体中に異物感。体に別の生物が巣食ってるような気持ち悪さ。 「おはよう、遅いお目覚めだね。…名前は言えるかい？」 「ボク…かい…？ぼくは、三枝薊だ。」 「…ふむ、なるほど。薊が残っているのか。」 所長と呼ばれるその男から状況を聞いたところ、UGN上層部によりproject sistersがなされ、自害に用いた弾丸とレネゲイドビーイングの力で新しい三枝薊が作られたそうだ。 他の薊はすでに覚醒し、実用訓練中らしい。 私の状態を確認したところ、意識はボクが全て奪っている。ただ、体の維持はレネゲイドビーイングに頼りきりになっている。 唯一「自害ではない」三枝薊であることが起因していると思われる。 私の覚醒が遅いのは当然だ、自らの意思で死を選んだのだから。 だが生き返った。代償として私の持つ「剣術」はすべて失われた。戦う力などない私に何ができるのか。 …ジャームによる急襲の際、私はいつものように武器庫から刀を取るべきだと思考し…実際に手に取ったのは拳銃だった。 意識と体が乖離している私の目の前で、ジャームたちがボクの目の前で倒れる。…他ならぬボクの手によって。 銃声が聞こえる。 「君の使うそれは私好みではない。…私にはひどくコレが馴染む。」 銃声が聞こえる。 「…私の知る限り、君の始まりは銃声。私はそれを尊重した。我々は『オリジン』を貴ぶ。」 銃声が聞こえる。 「そろそろ私の手番は終わりだ。あとは君が好きなようにすればいい。…ではまたいつか、ボク。」 銃声が、鳴りやむ。 「薊君、だいじょ…なぜ君が拳銃を持っているんだい？」 驚愕する所長の前で私は久しぶりに笑みを浮かべる。 「やあ、所長。これは『私』の得意武器なものらしくてね。」 「明日からこいつの使い方を教えてくれないか？」 所長が苦笑する。 「まったく、おとなしい君もなかなか見れないと思っていたのだが。」 「例の飄々とした態度が戻ってきてしまったか。」 私の話なんてしなくていいだろう？ 私はただ、『アカ』より綺麗なものを求めているだけなのだから。

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