タグ： 大学生 猪突猛進

　彼は大学の有名人である。学内駐車場か中庭を探せば、彼の生活するテントを見付ける事が出来るだろう。そう、彼は学内に(無許可で)住んでいるのだ。 　もし学内に彼のテントが見当たらない時は、きっとフィールドワークに出掛けているのだろう。 　彼は子供の頃から、気になる事があると自分の目で見て体験して初めて納得する、面倒臭い人間性であった。大学生になってもそれは変わらず、現地に赴き、現地の生活に混ざり、風土を調べ、地質を理解し、得た情報を総括して、初めて満足する。根っからの研究者気質である。 　気になると満足するまで邁進するので、帰って来ると高確率で筋肉痛で苦しむ姿が目撃されるのは、もはや大学内の恒例行事になっている。 　思い付きで行動を始める為一人で行動する事が多いが、彼に友人認定された身近な人間がたびたびフィールドワークに連れ拐われる事がある。 　最近では同じ大学に通う幼馴染みのハッドフィールド恵美利（保管所内に設定有り）が高確率で犠牲になる。 　彼より身体の大きいハッドフィールドを背負って拉致る姿は、幾分かシュールな光景である。 　そして、愛車にハッドフィールドを投げ込む姿は、間違いなく誘拐犯のそれである。そんな場面を目撃した他の学生や教授達から「はいはい、いつもの永瀬くんの奇行ね。ワロスワロス。」と生暖かい視線を向けられるだけで済むのは、彼の人徳（もしくは周囲の諦め）によるものである。 　フィールドワークにおいて、彼はその土地の歴史や伝承、民話や神話こそを重要視する。何故ならば、それ等は土地の性質や人々の生き方から生まれた物であり、必ず地理を読み解くヒントが隠されていると考えているからだ。 　主な移動手段は愛車のN-BOX。車中泊や夜営に備えて、キャンプ用品が多く乗っている。車での侵入が難しい場所では、リュックにいくつかの道具を詰めて持ち歩く。稀に荷物の上にハッドフィールドを乗せて歩いているので、それを見慣れない住民が警察に通報。通報を受けた警察に職務質問をされる事も少なくない。 　警察は言う。「もう嫌だ！またお前達か！いい加減にしてくれ！」 　何故怒られているのか彼が理解する日は、きっと来ないのだろう。警察官の苦悩は終わらない。 ■ある学校の階段の怪談

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