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一人称:オレ 二人称:○○、ちゃん、くん 母は失踪、父は別居。お金は父親から送られてくるにせよ、所詮オレは世界に一人ぼっち。友達といるのは楽しいけれど、家族がいないのはちょっと寂しいな。オレにも家族がいたらよかったのに。 *☼*―――――*☼* 浮気性の父親は至る所で女と関係を持ち続け、デリヘルの嬢を説き伏せて避妊もせずに子供をこさえた。それがオレ。嬢は華月を産んですぐにどこかへ消えてしまったし、父親にも家庭があったらしいから、産まれてすぐは金で雇われたお手伝いさんに育てられてきた。中学生くらいになるとお手伝いさんを雇っていたお金をそのまま華月に振り込むようになり、華月は完全にひとりぼっちになった。 顔の知らない父親は、花一名義で毎月お金を振り込むATM。中学生の華月にはかなりの大金で、欲しいものをバンバン買いまくっていたら、まあ、友達も増えた。ウチにある電子ピアノもそのひとつで、いつかバンド組めたらいいなあと思って日々練習していたけど、さすがにバンドマンでは食って行けないよなあ、と高校を卒業して入金の止まった口座を見ながら思った。愛想がいいので楽器販売員をしている。たまーに、上からのリクエストでピアノの実演販売的なことをやる。充実した毎日！ 友達は多くても、華月は"家族"に強い憧れを持っていた。学生時代の親友は、自分と境遇が似ていて、母親はもういないんだという。そんなところからも結構親友を特別視していて、こいつが同じ家族だったらなあ、と思いを馳せる日々。 *☼*―――――*☼* 入金が止まってしばらくして、一通ハガキが来た。苗字こそ｢花一｣だけれど、これは父親の名前だ。どうやら死んだらしい。 自分にとって身元がわかる唯一の肉親だ。顔を見るのも初めてだし、せっかくだからと足を運んだ。 喪服でなけなしの香典を納め、焼香の列に並ぶ。自分と同じくらいの男がいることに気づき、ああ、そういえば家庭を持っていたんだな、彼は。同じ種から産まれたはずなのに、随分と境遇が違う。向こうは恵まれ、こちらは捨てられて。オレはいらない子なのに、お前はいいよな、とその顔を見る。こいつがオレの―― ｢お、にいちゃん……？｣ そんな馬鹿な。親友が腹違いの兄だなんて、誰が決めた運命だ。世界なんて心の底から狂ってる。 オレはなんにも悪いことしてないのに。 【狂魘惨毒ストレイド】(2019-12-29) オレがよわいせいか、なあ。 なんでオレたちだったんだよ、どうして、ねえ。 オレたち、なんか、わるいことしたの？ 【君におはようと言えたら】(2020-6-13) ごめん、ごめんな、 おはよう、としはる 【学校の階段の怪談】(2020-7-5) なんか寝覚め悪いね、俺ら。 ねー、早いうちにお祓い行こうよ。

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