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気が付いたときにはもう彼は独りだった。 親族はおろか友人すらいない。彼に近寄ろうとする者は誰一人としていなかった。 全ての理由は彼の出生の頃まで遡ることとなる。 珍しくイギリスに豪雪が降った日、片田舎の病院へと歩いていたただ一人の母は運悪く道端で産気づいた。 周囲に人はおらず、居たとしても豪雪による視界不良の中倒れた彼女を発見するのは困難だっただろう。 結局彼女が発見されたのは、病院からの時間を過ぎても彼女が来ないという連絡を受けてからだった。 病院搬送時母はすでに低体温症で長くはないだろうと判断された。 胎児はまだ32週で、しかしこのまま放置すれば母共々死ぬだろうことはみえていた。 死の際の母親の気迫により病院の医師たちは赤子を摘出することを決めるが、さらに不運は続く。 彼女の運び込まれた病院は当日の雪の影響により、産科医外科医どちらも病院にいなかった。 14時間後、最期の力を振り絞り逆子の彼を産み落とすと同時、母は死んだ。 幼少期、彼はいくつもの事件に巻き込まれる。 拉致誘拐は2桁、監禁は8度。 遊びに行った先で立てこもり強盗、遊園地では爆弾騒ぎ。 キャンプに行った先で冬眠から早く目覚めてしまった熊に誘拐された…なんてのは彼だけのものだろう。 極めつけは彼の住んでいた孤児院が燃えたことだろうか。 自分がそういう体質だと気づき彼なりにその場から逃げようと、どうにかしようとしたことはあったが 逃げた先でもまた別の事件に出くわした。 そんな彼のことを周囲の人々は死神だ、悪魔だと罵る。 彼が他人に対して不信感を覚えるのにそう時間はかからなかった。 彼は消防士になることを夢見た。 理由などありきたりなものだ。 孤児院での火事の際、助けてくれた彼らに憧れた。 自らの不運体質を乗り越えるため、知識と体を鍛え上げた。 不運を知識で克服するように、その体で自らの手で誰かを助けられるように。 そうして消防士になった彼を待っていたのは、残酷な現実だった。 1件目。初仕事へと向かった彼は1人の少年の死を目撃した。 もう少しで届きそうだった二人の手を、無慈悲にも落下してきた木片が遮った。 2件目。救出へと向かう数秒前、家が燃え落ちた。 鎮火後、一家全員の死亡が確認された。 3件目、4件目、5件目と同じようなことが続いた。 彼の周りではある噂が流れていた。 あいつと現場に向かうと火の手が強くなる。あいつと救出に行くと誰も助けられない。 そんな彼にもいいことはあった。 ある日、現場から奇跡的に助けられた人から呼び出しを受けた。 呼び出したのは鍛冶屋のおじさんだった。 行って渡されたのは、耐火金属で作られたロザリオのネックレスだった。 『兄ちゃんは助けられなかった奴の事ばかりを気にしているようだが、俺達助けられた奴も居るってことをちゃんと覚えておいてくれよ』 そう告げられて涙が止まらなかった。 しかし幸運があれば不運もある。 ある日、署長に呼び出されて告げられた。 ただ一言、辞めてほしい、と。 彼は唯一の夢も失った。 通りの路傍、壁に背を預け俯き座る。 一日中ずっとそうしていた。 誰かこの手を取ってくれないかと願うが。 友人も知り合いも、ましてや家族さえいない、町中に嫌われた彼の手を取るものなど誰一人としていない。 いっそ死んでしまおうか。 ──そんなことを考えた時、ふと声をかけられた気がした。 特徴 ・4-6　寄せ餌(D) [1*10P] 人間以外の怪物に好かれやすい。誘拐されれば殺されずに監禁されるか、もっとひどい目に遭う事もある。 ・1-9　一族伝来の宝物 絵画、本、武器、家具など個人的な宝物で、探索者やキャンペーンにとって特別な価値を持つ品物を有している。魔術的な力を持つアーティファクトかもしれない。 セッションログ ・『愛のほこさき』 　SAN→58、目星+7 　　AF：あなたの面：つけることで目星/聞き耳/図書館に+5の補正。破壊することでSAN値+1d10(1度のみ) ・『999』　SAN→36、目星 +14、神話 +10 　幕間　SAN→40、目星 +1 ・『海石榴邸殺人事件』　SAN→38、回避 +2、芸術(絵画) +10、神話 +3 　　後遺症：かつての仲間の幻覚 　幕間　SAN→42、消火銃 +18 ・『999』Re　SAN→46、ハンマー +10、消火銃 +8、図書館 +1、目星 +10、博物学 +3、歴史 +7、神話 +1 ・

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