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科戸 維吹(しなと いぶき) 由緒ある家柄の長男として生まれるも、家系では珍しい瞳の色が受け入れられず、虐げられる対象となる。自分の居場所を作るために、幼少の頃から家事・勉強等ただひたすらに努力して過ごす。その成果か、学校での成績は、常に学年上位5位以内を収めていた。が、「勉強なんて誰でもできる。その程度の努力でいい気になるな」と家族から認められることはなかった。もともと不器用なためか、家事は大して上達しなかった。14歳の頃、母親に目を潰されかけ、自らの意思で家を出る。両親や弟とは以来会っていない。 家を飛び出し、無我夢中で走り続けた先――フランス料理店の裏で蹲っていたところ、店のパティシエである科戸 千真(しなと かずま)に拾われる。なんやかんやあってそのまま同居することとなる。 千真との出会いから、ひそかにパティシエの道を志し、調理専門高校卒業と同時に弟子入り。見習いとして千真の店「パティスリーシナト」を手伝う日々を過ごす。また、経営業務や動画編集の手伝いにより、PC技術が若干身についた。 最近は、味だけなら一部店に出せるレベルまで上達してきたものの、見た目が地獄と(千真に)評判。千真のお菓子を深海で輝く煌びやかな宝石と例えるなら、維吹のお菓子はゴミ捨て場に転がる錆びれた廃品だろうか。99パーセントの確率で何かしら潰れて(or異様な造形に歪んで)いる。某氏曰く、「君の闇が垣間見えるような気がする」とのこと。本人的には割といい感じ(無意識)らしいが、普通にダメ出しをくらい、普通に凹む。手先が器用なひとを心底尊敬するとともにに、果てしない嫉妬を抱いている。焼肉にして食いたい。また、もともとの反射神経の低さからか、それとも、ある種痛覚への慣れからなのか、(主に顔の)掠り傷が絶えない。 維吹にとって千真は、はじめて自分に「居場所」を与えてくれた存在。親のような、兄のような、友のような、師匠のような。いつの間にか共に馬鹿をし、世話を焼き、焼かれといった、一言で表すには少々複雑な関係となっていたが、何よりも大切な存在であることに変わりはない。彼が幸福であるのなら、それだけで十分なんだよなぁと割と本気で考えている。が、ゲテモノスイーツの毒見だけは勘弁願いたい。生い立ち故か、虚無主義的思想を抱いているものの、根は真面目な努力家である。 【通過シナリオ】 『傀逅』（2020.02.25） 『雨夜のおしゃべり』（2020.08.06） 『汝、ネコと和解せよ。』（2020.11.15） ー『午前三時に見る夢は』 『マインドイーター』（2021.06.12） ***************************************「傀逅」シナリオ後********************************************* ＜その後＞ 以前と変わらず、千真の店でパティシエ修業を続けている。 ふとした瞬間に、あの冒涜的な6日間の体験を、記憶を呼び起こしては震えているかもしれない。夢に見ては魘されているかもしれない。そこに関係しているのかは定かでないが、維吹の作るお菓子はより混沌としたビジュアルへと進化(?)した。 大災害を後にしたような町を見渡し、ゆっくりと息を吐く。誰も、何も覚えていない。彼と、一機と、自分以外。 いつか復帰したかもしれない生姜野選手の試合をテレビで見たり、乱刃アルティメットの基地へ赴き、やっぱり帰ろうとしたところを百目鬼龍一に掴まれ情けない声を上げているかもしれない。それでも不思議と安心してしまうのだろう。なぜなら、彼が本当は情に厚い青年であることを知っている。照井明日香のチャンネルで再び彼女の笑顔が見られたなら、こっそりグッド評価を押していることだろう。 誰も、何も覚えていない。けれど、ここは確かにあの羽星市だ。パラレルワールド等ではない。空白になってしまった日々は、空白ではなかったと、共に過ごした彼が証明してくれている。少なくとも維吹はそう思い込んでいる。 死を覚悟したのは、2度目だ。いや、2度目は実際死んだのか。それでも維吹は生きている。千真に感謝を伝えるために、それから、なんとなくほっておけない後輩のために。 「もし本当に、心から死を望んでいたとしても、それは選ばないでほしい」 あの時は理由が分からず曖昧な訴えになってしまっていたけれど、今ならもう少しだけ、かけられる言葉がありそうだ。 神様のオモチャになるよりは、まだマシな気がするよ。

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