タグ： よるから

ごくごく普通の、ちょっとだけライトオタク気味の男子高校生。 明日も明後日も、昨日と今日と同じような日々を。ずっと、送るんだろうと信じていた。 ―――転機は、突然訪れた。 いつもの通学路をちょっと外れて、今日発売のソフトを取りに行ってから帰ろう、なんて思っていた帰り道。 工事中だったビルの重機が、『がたん』と傾いた。 太陽の光が陰る。落下する鉄骨。轟音。悲鳴。激痛。誰かの、こえ。 『おや、まだ生きているとは驚きです。　ご褒美に、プレゼントでも差し上げましょうか。』 落ちてきた幾つもの鉄骨に曳き潰されて、藻掻くことすらできない俺に。 冷たい石みたいな何かを『埋め込んで』。その誰かは謡う。 『その瞳で』 『その力で』 『その声で』 『君は、誰かを思うままにできるでしょう』 『君が正気を失う方が先か。遺産が君を食い尽くすのが先か』 『それとも――その瞳ごと、全てを捻じ伏せて見せるのか』 『楽しみですね』 ―――そう、嗤った。 それきり世界は裏返り、知らず手にした力を携え、青年は日常の裏側を駆け抜ける。 その『瞳』に巣食う力の正体と――その宿主の末路を。 青年は、まだ、知らない。 【誓約の瞳】 所有者の『瞳』と一体化する黒い石の姿を取る『遺産』。 所有者に『他者を操る』力を与えるが、その代償として、所有者は『他者を信じられなくなっていく』。

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