タグ： 高尾山 ホルマリン漬けの心臓

四年制大学卒業後新聞会社に就職。記者4年目。 スポーツやエンタメ関係の記事に携わりたかったが本人の希望空しく政治や刑事事件を担っている。 HO1とは現場で何回か会ったことがあり数度話したことがある程度である。染香が毎度のように現場にいることをHO1がどのように思っているかは知らないが、染香は「若いのによくやってんなぁ」と感心している。 梶谷家は医者一家であった。父と兄は外科医、母は精神科医、妹も医者になるために現在医学部に通っている。 小学生の頃から小説家になりたいという夢があった染香だったが成績優秀であった染香への向けられる両親からの期待、周りからの目から逃れることが出来ず医学部へと進学する。自分よりは劣るが成績優秀だった兄の必死な姿を見て心の奥が段々と冷え切っていくような気がした。やる気の無い染香に対して兄から心無い言葉を投げかけられることもあったが、染香の冷え切った心には届いてなかった。大学には4年間きちんと通った。両親からは院へ進めと言われたがここで敷かれたレールを走るだけで自分はいいのかと考え、親の金で借りていたマンション、携帯を解約。在学中に貯めていた金で新しい家を借り、スマホも新しくする。親のコネも何もない「梶谷染香」という一人の人間として生きていけることに染香は清々しい気持ちを覚えていた。 現在の新聞会社は医学部卒の染香に初めは驚き、どうせボンボンだろうと高を括るような人間もいたものの、染香の記者という仕事への真摯な態度や熱意を見て、1年も経てば悪意のあることを言うような人もいなくなり、会社内の中心となった。 --- 医者一家に生まれ、成績優秀頭脳明晰だった俺に期待する声は大きかった。 しかし、俺は生まれもって貧血持ちであり、生活に支障はないが時折眩暈を起こしていた。 いくら医者一家と言えど専門ではない分野のため父や母に診てもらうことはなく、久慈病院に長らく通院していたし今もしている。貧血が酷いときは点滴をうってもらっているが効果は芳しくない。逆に違和感を覚える。食欲もなくなってきたし、何かを食べたとしても味を感じられない。病院にそれを言っても、検査は良好だとしか返ってこず不信感を抱く。 記者としての意地だ。どうせなら独自に調べてやろう。 しかし何も見つからない。おかしい、こんなにも出ないことがあるのか。 何か他の手はないのだろうか。記者としてここで終わるわけにはいかない。 何か、あぁ、それ以上に身体の具合が悪い。身体を動かすことすら億劫だ。 ■PC2：記者 あなたは昔からやや貧血気味の体質である。貧血気味と言っても、時折眩暈を起こす程度であり、生活に支障が出るレベルのものではない。 長らくその関係で通院しているのは久慈(くしげ)病院という病院である。 久慈病院とはこの都市で随一を誇る大きさと最先端医療を持つ有名な病院だ。特に『移植手術』を専門に行っていると言う事もあなたは知っている。 貧血が酷い時は点滴をうつこともあるが、ここ最近になり身体を動かす度に妙な違和感を覚える様になっていた。 更に言えば、食欲も激減し、食べ物を食べても味らしいものを感じられなくなってきている。 それを病院側に尋ねても、「検査は良好、夏バテなのでは？」と返されるばかりだ。 徐々にあなたは病院側の不信感を膨らませる様になり、独自に調べることとした。 けれど病院側の調査を始めたはいいものの、それらしい噂の片鱗すら驚くほど見ることはなかった。 不思議なほどに一切見つからなかったのである。 もう少し違うアプローチをかけてみてもいいのかもしれないとあなたは思い直していたが、 それ以上にやはり、体の調子が悪くて仕方がなかった。 上手く関節を動かす事が出来ないのだ。おまけに食欲も無い。 筋力が著しく低下していくのを感じている。 「ホルマリン漬けの心臓」4/4

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