タグ： 板井厨房

「うちの支部へようこそ、少年少女諸君。俺は琴園石皐月。ここの支部長……つまり、一番偉い立場なんだ。胡散臭いだろ？」 　支部長。なんだか適当な言動が目立つ男だが、支部長としての仕事ぶりは可もなく不可もなく。中年も通り過ぎようとしている年齢だが、UGNに入ったのは割合最近のことらしい。 　普段は市内の高校で体育教師をしている。生活指導部長を兼任しており、学校内でオーヴァードに覚醒した者がいれば保護しているのだが、最近オーヴァードに覚醒する生徒が多すぎることに頭を悩ませている。 「俺も戦場に連れてけよ、少年の百万分の一くらいの力ならあるぜ。というか、支部長権限で無理やり行くからな」 　戦闘能力はあるが、はっきり言って弱い。本人にできることと言えば、体の一部を射出して相手にぶつけることだけ。弾丸は爪ほどの大きさで、オーヴァードの回復力と比べれば誤差くらいのダメージである。昔は百発百中のスナイパーだったらしいが、現在は右腕を無くしており、エグザイルの能力を使って無理矢理あるように見せているだけの状態なので、銃を使うことは出来ない。 　そんな彼の真価は、アヴァターを用いた戦闘にある。彼のアヴァター、“矮小部隊”と呼んでいるそれは、指先ほどの大きさの狙撃兵を模している。やはりそれ単体での攻撃力はさほどでもないが、その名の通り群体のアヴァターであり、主人が射出した体組織を目印として、主人のそばから、敵のすぐ近くから、窓の外から、大勢のアヴァターが間断なく射撃を続けることで敵の“一人”に確実な敗北をもたらす。 「それが“一”なら、そいつの力が百だろうが千だろうが倒す。組織の力ってのは偉大なもんだ」 　オーヴァードに覚醒する以前は、狙撃手を中心に構成された傭兵団を率いていた。戦闘にも暗殺にも使える戦力としてそこそこの名を挙げていたが、ある依頼において、ターゲットが100m級の距離から反撃を行ってきたことで傭兵団は彼を残し全滅。覚醒したことで命からがら逃げ伸びた彼は、そのターゲットを“イチ”と呼んで、復讐するためにUGNに入った。UGNにした理由は『安定しており、情報収集がしやすそうだったから』で、あくまでも復讐を第一の目標としている。支部長になったのは部隊の指揮官としての才能以外に、中央による監視を強くする狙いもあったと思われる。 「“一人”で出来ることなんてたかが知れてるだろ？　まずは事情を話してみろ。もし俺が邪魔してきたら殺せばいい。簡単だ」 紫：クリメイト

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