タグ： ひだ

とある小さな小さな村で育った少年。彼は捨て子であったが、老夫婦によって何不自由なく育てられた。 しかし、ただ一つ。余程の理由があったのか、里親の老夫婦には「お前は狼の子だ」と教えられていた。 義務教育を終え、思春期に入った彼はこれに耐えられず、老夫婦に一言礼を告げ、上京する。 運よく郊外のリサイクルショップに住み込みで働けることとなり、少しずつ里親へ仕送りをしながら一人暮らしを夢見て働いた。 月日は経ち、少年は18になった。貯金ができ、いよいよ都内で部屋を探し始めた。少年はこの数年で、里親が嘘を吐いていたこと、そして、それは恐らく、彼のためであったろうことを悟っていた。それでも彼はどこかで、自分は狼から生まれたのではないか、と思わずにはいられないのであった。 彼は「自分が他人と違うところ」に敏感な一方で、人間としてのアイデンティティを確立しようと藻掻く。

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