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「触るな、見るな、近づくな」 「それは俺に利益のある案件か？」 一人称:俺 二人称:お前 資産を運用しながら生活する、お金持ちのお坊ちゃん。右手が義手。愛なんて知るか。 *☼*―――――*☼*――――― 充豊は資金運用して暮らしている、ちょっとお金持ちな良家。うるはには弟が1人居た。 幼い頃からしっかりしていたうるはは、親が自分に向けている感情がただの親愛では無いことを理解していた。充豊家の跡取りの息子。頭が良い、行儀がいい、次いでに顔も良くて、うるはを通じて親が褒められているということには気づいていた。まあ別に、今後の人生の安寧が約束されている最高の環境で、文句を言うなんてしなかったけど。 それはうるはが8歳の時だった。充豊家にはコレクションとして、色々な重機がある。父親のよく分からない趣味だ。まだ小さく、好奇心旺盛な弟はその日、お手伝いさんに叱られて行方を眩ませていた。両親は酷く慌てていた。そりゃそうだ、自分の家のガキが怪我なんてしたら、不注意を疑われるから。なんだかものすごく嫌な予感がしていて、父親の重機コレクションの倉庫に入ってみた。倉庫を隔てるフェンスは、自分くらい小さい身体ならするりと抜けられることを、子供を本当に見ていない両親は知らない。 ゴウンゴウンと嫌な音を立てる何かの機械と、泣き叫ぶ弟の声。駆けつけてみれば、稼働するショベルカーと、運転席からぶら下がっている弟が見えた。手を離せと言っても、泣くばかりで要領を得ない馬鹿な弟。このままだと稼働しているタイヤの部分に巻き込まれたりするかもしれない。それは困る、だって俺たち、いい子じゃないと家に傷が付くから。今後のキャリアに傷がつくから。 不安定な梯子を立てかけて、弟を運転席から抱き上げる。梯子の使い方なんて、うるはには分からなかった。稼働しているショベルカーは、梯子の支点をずらし、うるはと弟はその場に転倒した。 弟は無事だった。咄嗟に後ろへ放り投げたから。軽い打撲で済んだ、でも助けも呼ばずに泣いてただけだけど。タイヤに巻き込まれた右腕は、切断することになった。キャリアも人生も台無しだ。 現代の技術はすごい。ささやかな神経の動きで指先まで駆動する義手があれば、日常生活にそれ程影響は出ない。ただ、右腕を見て狂ったように自分を溺愛する両親と、使用人と、周りのガキどもがたまらなく、……そう、たまらなくウザかった。ただ、イラついた。 みんな俺を見ていない。俺の財産、俺の境遇、俺の外見、俺の才能に目をつけて、恋をして、その先にある"恋する自分"に酔ってるだけなのだ。吐き気がする。 世界は今日も、作り笑いと嘘の恋で塗り固められている。 *☼*―――――*☼*――――― 【初恋性ストックホルム症候群】(2020-6-27) 「なにかして欲しいことはないのか」 「……多分、好きだったよ、俺も」 … … … はじめまして、ジョエル。 お前は俺の何を見て、俺にどんな世界を見せてくれる？

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