タグ： #狂気山脈

　神野水輝。かみのみき。32歳という年齢の割に思考は軽く、言動は明るく、しかし妥協と諦観、そして「曲げること」を良しとしない芯の通った女性。“登山家”という職業に就いているにしては長い睫毛とバチバチの化粧で顔面をキめ、すぐに写真を撮りたがり、口癖は「ヤバい」「ウケる」の二択とマジで軽いが、“ギャル”を第二の職業としているのでどうにもならない。これでも名だたる雄峰を数々制覇してきてはいるので「そんじょそこらのギャルじゃないから！」とは本人の談。 　そんな彼女が初めて「山」というものに触れたのは小学二年生の時。とはいえ、学校の裏にある小さくなだらかな「丘」のようなものではあったが、とにかくそれが初の彼女にとっての”登山“だった。狭い田舎の町での”片親“という肩書きは、人々からの奇異の目を一心に集めるには十分すぎた。平たく言うのならば彼女はいじめられっ子であった。母親は忙しく、学校にも居場所はない。孤独であった彼女が遂に逃げた先にあった山。無我夢中で登った先、息を切らしながら辿り着いた山頂で見たのは夕陽に染まる黄金色の田園。───幼い水輝が山に魅せられるのには、必然とも呼べる景色だった。 　「もっと綺麗な景色を見つけたい」。そんな小さな目標から彼女の夢は始まり、中学入学と同時に転校した先で見た目から強くなるためにギャルとなってもそれは変わらず、高校生の時に彼女は登山家を志した。 　彼女がSNSに上げる頂上からの美しい景色達は人々の心を掴み、寄せられる反応は再び彼女が頂上を目指す気力となり得る。今も変わらない子供の頃からの夢───「もっと綺麗な景色を見つけたい」。それを叶え続けるため、彼女はまた山へ足を踏み入れる。 　厳密に彼女の職業を説明するなら登山家兼ギャル兼フォトグラファーとなる。収入源は主に3つ目。自撮りはあまり上げない。山ではないので。 　そして二度と虐められたくないし見下されたくもないからという理由で、高校卒業と同時にキックボクシングを習い始めた。強い女。手当ても自分で出来る。強い女なので

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