タグ： 10万年後の君達へ

余り明るい性格とは言えず、少しぶっきらぼうな言い方をしてしまうことが多々ある。 そのせいか、友人は決して多くない。 そこまで沢山笑う質でもなく、基本的に苦笑というか、皮肉な笑いが多い。 考え方は現実的。悲観主義にも近く、最悪を想定して動く。 趣味は風景画を撮ることで、まだ見ぬ景色には一応は心躍るらしい。 空井　白狼(うつい　しろう)という名前の売れないジャーナリスト・・・という仮の身分で赴く。 彼は孤児院に通って子供たちの世話をするのが日課だった。 その活動の過程で知り合った一般女性との関係も少しずつ深まっていた。 このままこの女性と結婚出来れば、こんな風に元気な子供を授かり楽しく暮らしていく。 これを幸せと呼ばずに何と呼ぶのだろうか。そんな風に考えていた。 そんな妄想ともとれる未来予想図が叶うことは無かった。 孤児院からは公安除名により、身分が不確かなものになった為、立ち入りを禁止。 女性とも周囲が「公安除名なんてよっぽど悪いことをしたんだ」と捉え、 反論の余地なく引き離され親の意向で女性は遠方に転居。 桐谷智也がこの件にどのような形で関わっているのかは分からない。 しかしながら、必ずやその正体を暴き復讐を遂げなければならない。 私刑は悪だという正義なんてものは、肩書や、地位や名誉と共にあの日剥奪された。 彼は桐谷智也を殺したいほどに憎んでいる。 かつて彼はよく笑っていた。 かつて彼は友人が多く居た。 かつて彼は裏付けされた自信に満ちていた。 かつて彼には夢があった。 周りの人間皆を笑顔にしたい。 平和を、治安を守っていればいずれ其れが叶うと信じて疑わなかった。 自分は其れを守る一助になれているんだと、警察官という仕事は間違いなく善性のものだと信じて疑わなかった。 いつの日か、自分も家庭を持ち、子供をもって、連綿と受け継がれてきた日本を繋げるのだと信じて疑わなかった。 誇るべき偉大な国、日本に生まれたことは幸福なのだと信じて疑わなかった。 自分は必死で努力してきてそれが報われ、また次の努力へと繋げるのだと信じて疑わなかった。 信じて、疑わなかった。

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