タグ： アヌビス娘 素麺

あなたはうっすらとある男性の顔を覚えている。 それはとても大切な男性だったはずなのにはっきり思い出せない。 ひとつ思い出せるとしたら、お互いにとても強い絆で結ばれていたこと。 そういえばほかにも誰か女の子がいたような・・・誰だっけ・・・ 関係ないや、それでも彼はわたしのことを大切に、それこそ大事な大事な【人形】を扱う ように丁重に扱ってくれたのだから。 彼女は遊んでいた。 否、彼女にとってはただの遊びであった。 そのせいで、ゲームと称した公社任務のシミュレーターで大変いい成績を「出してしまった」。 結果、公社からは念入りに義体の条件付をされ、まるで人形の様に動くまでになった。 しかし、ガチガチな条件付による融通の聞かなさが裏目に出、指示がない限りなにもできなくなってしまった。 更には義体化による副作用により、あなたは早々に前線から引くことになる。 最後の任務ではなんとか頑張って成功した記念に担当官から小さな花の種を貰った。 それからは、実際に任務に行けないので、持て余した暇をシミュレーターともらった種の育成や、趣味の人形作りに注ぐのだった。 花は、彼女が育てている間はごく普通のパンジーの花であった。 世界崩壊後になり、異形へと成れ果、姉妹達に襲いかかるのだが、それはまた別の話。 また、彼との数少ない記憶は大変美化され、お互いが小さくないお互いへの感情をもっていることも察していた。と思っている。 一線を引いてからは彼との接触が減ってしまったが、自分で作った『担当官に似せた人形』だけが、彼女の心の支えだった。

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