タグ： のヮの式二 二万円家

特徴:オシャレ、愛書家 職業特記事項:APP+1 現実に存在することが信じられないほど、完璧に整った容姿を持つ美女。その風貌は名の通り、新雪の中に凛と咲く、一輪の可憐な花に形容される。 あまりの美貌に逆に近付き難いのか、彼女に言い寄る人間はほとんどいない。しかし、一度見ると忘れられない姿をしているため、彼女に会った人の中には毎晩彼女の夢を見るようになった者もいるらしい。 さらに彼女自身もまた、幼い頃から自分がたいそう美しいという自覚を持っていた。そして、そんな美しい自分が、愛しくて、愛しくて、堪らなかった。 殺してしまいたいほどに。 彼女の自己愛は歪みきっていたのだ。 物心ついた頃には、自分を汚し、嬲り、犯し、壊すことを毎日のように空想するようになっていた。美しく愛らしい自分が、ただひたすらに蹂躙され、目も当てられない無惨な姿に変わり果てることを想像するだけで、興奮して仕方なかった。 次第に自傷行為もするようになった。鏡を見ながら、自分の身体に包丁を突き立てた。無慈悲に動く機械を使い、首を絞めたりもした。苦痛に歪む顔が、次第に生気を失っていく顔が、それでも生きようと必死に藻搔く顔が、愛しくて堪らなかった。しかし、運が良いのか悪いのか、自分を殺そうとするたびに家族に見つかって止められた。前には腕を切り落とそうとし、大量出血で気を失っていたところを発見され、緊急搬送されたこともあった。 自殺未遂を繰り返していることから、周囲からは精神を病んでいると思われている。心配した紅織愛に診てもらったこともあったが、どれだけ念入りに診断しても精神は健康そのもの。彼女の素行は人々を困惑させるばかりであった。 また、彼女には悩みがあった。それは、愛しい自分を殺すことができるのは一度だけ、そして、最も美しいであろう自分の死に顔を自分で見ることはできないということである。自分が殺される姿を見てみたいが、自分が死んでしまっては意味がない、密かにそのジレンマに苦しんでいた。 大学を卒業後、彼女は美容外科医になった。 個人で運営している小さな病院で、知る人ぞ知る場所にひっそりと建っているからか、それほど儲かってはいない。診療時間外は自室に篭って本を読んでいるらしく、あまり人前には出ないという。 施術希望者は圧倒的に女性が多い。そして、当初はコンプレックスの解消程度のつもりで来た者も、誰もが彼女の容姿に一目惚れし、気付いた頃には最上級の美を求め、中毒のごとく通い詰めるようになってしまうらしい。そして最終的に、皆が口を揃えてこう言うそうだ。 「貴方のような顔になりたいんです。」 彼女はそんな患者達の願いを完璧に叶えてみせた。 自分と判別がつかないほど、瓜二つに仕立て上げるのである。自分の顔の愛しさは何でも知っている、だから完璧に再現できる、というわけである。 しかしある日、術後経過を報告に来た、自分と瓜二つの患者を前に、彼女は恐ろしいことを思いついてしまったのだ。 彼女は湧き上がる衝動に任せてその患者を気絶させ、病院の奥にある自室に連れ込んで監禁したのだ。そして真っ先に喉を潰した。自分の声と似ておらず、邪魔だからである。そして、自分にそっくりの患者に、欲望を惜しみなくぶつけた。夢中だった。ふと気がつくと、その患者は何だかよくわからない肉の塊となってしまっていた。 この出来事は、病みつきになるには十分すぎるほど、彼女に至福と快楽をもたらした。それ以来、彼女は自分のような容姿になりたいと希望する患者が現れるたびに、その望みを叶えてみせ、その対価として監禁し、愛しながら嬲り殺すという所業を繰り返すようになった。 自傷行為の頻度は徐々に下がっていっており、何も知らない家族はほっとしているようだ。 最近は読んでいる本の影響でいわゆる「寝取らせ」に目覚めたらしく、「自分以外に殺される自分」にまで性的興奮を覚えるようになっている。マイブームは、麗友や天使を自分の病院に呼び、監禁してある自分にそっくりの患者を目の前で殺させ、犯させ、その様子を眺めることらしい。 ………彼女は気付き始めている。手術で自分と瓜二つになった人間も、所詮は形をなぞっただけの贋物にすぎないということに。

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