タグ： 私だ！

………… エルマー･バントという男は、お世辞にも男には到底見えない容姿をしている。 その愛らしい容姿に騙された男は数知れず、｢男でもいい。むしろ男だから良いんだろ｣と面と向かって言ってくる者もいた。頭おかしいんじゃないだろうか。 女性には｢エルマーくんって男に見えないから話しやすいんだよね｣とか｢エルマーくんといると女であることが恥ずかしく思えてきちゃうから、もう会いたくない｣などと言われる始末。 正直泣きそう。泣いた。 少しでも男らしく思われたいエルマーは、自分に出来る限りの努力をした。髪をベリーショート(本当は坊主にしたかったけど泣きながら止められた)にしたり、一人称を｢俺｣や｢某｣(これは血迷ってた)にしたり、ガニ股で歩いたり、エトセトラエトセトラ。しかし、可愛らしいエルマーは何をしても周囲の目には微笑ましく映るらしい。 ある日、そんなことを続けていて疲れてしまったのか、もうどうにでもなれ、と自暴自棄になってメイド服やらロリータ服やらを着て近所を練り歩いてしまった。 後に正気に戻ったエルマーは壁に頭を打ちつけた。｢可愛かったよ｣と近所のおばさんやおじさん、果てにはエレメンタリースクールに通う少年少女達にまで言われてしまったのだ。 黒歴史になることが確定した。エルマーは咽び泣いた。 ………… 【応急手当】 エルマーは近所の子供たちとよく遊んでいた。子供たちも｢エルねぇ｣と呼び、慕ってくれているようで嬉しくなる。 子供はやんちゃ故にすぐ怪我をする。泣きながらエルマーに頼る子供たちの対応をしているうちに、簡単な手当なら出来るようになったのだ。 でも俺は｢にいちゃん｣だぞ。いやほんとだって。全然信じねぇじゃんコイツら…。 【信用】 エルマーは冒頭で言った通り、可愛らしい容姿をしている。それこそ、女のフリをしていたって遜色ないくらいには。 可愛らしくて無害な女を演じるだけで、相手は対価なしにエルマーを信じてくれる。正義感の強い者であれば守ろうともするかもしれない。 それに市場のおっちゃんが値切りしてく、ゴホンゲホン、ンン"ッ。こればかりは、女のような容姿で生まれて良かったと思えた。 【値切り】 安ければ安いほど良い。しかし上手に値切れるとは言っていない。以上！

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