タグ： おりおじさん

気の弱い男の子。ついこの間高校を卒業したばかりの大学生。 うさぎのぬいぐるみ「うーちゃん」が誰よりも大切な友達で、家でも外でも、ご飯を食べるときも眠るときもいつも一緒にいる。もちろん今回の旅行もうーちゃんと一緒。 うーちゃんは誠也が生まれたときに出産祝いで親戚から貰ったぬいぐるみで、物心がつく前から一緒にいた。 その頃から誠也にはうーちゃんの声が聞こえている。うーちゃんは小さな子どもが話すような言葉で誠也に話しかけてくる。両親や友達に話すと不思議そうな顔をされるが、それでもやっぱり聞こえてくる。しかしそれは悪い言葉ではなく優しい言葉がほとんどで、心が滅入ったり体に現れたりなんてことも無いため、当たり障り無く生活している。 生まれたときから両腕が無い。けれど不便はしなかった。幼い頃簡単に義手が手に入ったからだ。 定期的に病院でメンテナンスを受けなければならないが、しかしうーちゃんを抱きしめたり、うーちゃんの怪我を治したりすることのできるこの”腕”が大好き。 月に行って兎に会うのが幼い頃からの夢。 「うーちゃんが月のうさぎさんと遊びたいって言ってたから。うーちゃんは僕が病院に行くときも、大きなテストを受けるときも、いつも応援してくれた。だから今度は僕がうーちゃんの夢を叶える番なんだ」 高校卒業を機に、勇気を出してうーちゃんと２人で月に行くことにした。地球の外に出るなんて初めてだけど、きっと一緒なら怖くないよね。

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