タグ： ざいちか 012 s 秘匿

大卒の刑事。元々医師を志して医療に精通した中高大一貫校に通っていた。元より頭が良く、医学生として相当優秀だったらしく、医師免許は取得のための基準を満たしていないので持っていないものの、それさえ除けば普通に受かるのではないかと言われているほど知識は十分にあるそうな。周囲にはよく「お前何で医師でも検死官でもなく刑事やってんだよ」と言われる。警察学校では勉学の面で優秀な成績を残しており、警察官になった後、ある事件を解決した功績もあって刑事になるのにそう時間は掛からなかった。 右目に眼帯をしている上にとある噂も相まって始めこそ威圧感を感じる人が多いが、話してみると存外軽く、フレンドリーな印象を抱くことだろう。そんな軽薄な印象とは裏腹に知識が富んでいるため色んな意味で掴み所がない。例えるなら"クラスに一人は居る普段はちゃらけてるのに何故かテストでクラス順位一位取ってくよく分からん奴"みたいな感じ。面倒見が良いからかそれなりに人徳はあるが、振る舞いが"調子のいい兄貴"のようなため多少うざったい所はあるかもしれない。 彼には6つ下の弟がいた。面倒見のいい兄と素直で可愛らしい弟という絵に描いたような仲のいい兄弟だった。しかし、その幸せな日常は突如崩れる。弟が中学生になる頃、素直で利口だった弟は夜遊びに更けたり、家族に黙ってどこかに出掛けたりすることが増えるようになり、ひどい時には自傷していることもあった。原因は全く分からない。弟の友人関係を探ってみても悪いことに手を出していそうな友人などおらず、弟の友人らに話を聞いても何も手掛かりは掴めなかった。何かの病気じゃないかと病院を訪ねるもただの鬱だろうと告げられた。自身がただ確かに分かるのは、弟が日に日に狂っていっているということだけ。『苦しんでいる人を救いたい』なんて一心で医学を学んでいるというのに、目の前で苦しむ弟すら助けられず、ただ寄り添うことしかできなかった。いや、それすらできていなかったのだろう。ある日、弟は遂に帰ってこなかった。どこを探しても見つからず、警察に捜索願を出すも何も情報は掴めなかった。自身にできることは限りなく少ない。それでも、弟が帰ってくるのを願って自身にできることをするより他ない。 この時からだろうか。いや、確実にこの時からだ。医師の道から逸れたのは。両親を心配させまいと表面上は勉学に励んでいたが、内心それどころではなかった。自身が手掛かりを見つけられれば。自身が捜査に介入できれば。自身に力があれば。勿論、それらができないことは重々承知している。それでも望まずにはいられなかった。望まずにはいられなかったから彼は刑事の道を選んだ。 警察官になった後、彼は日々巡回やら地域交流やらに励みながら弟の行方を追っていた。共に勤めていた相棒も情報収集を手伝ってくれてはいたが、特にこれといった手掛かりも掴めないまま2年が経った頃、彼は弟と再会を果たす。偶然か必然か、はたまた神の悪戯とやらなのか、それはそれは最悪な再会だった。 ある日発砲事件が起きたのだ。偶然現場近くにいた彼と相棒は早急に駆けつけた。駆けつけた先には、こちらに背を向けて立つ銃を持った犯人と、血を流して倒れている人が数人、そして逃げ惑う人々。犯人に静止するよう忠告し、銃を構える。犯人はゆっくりこちらを振り返った。この時初めて犯人の顔を真っ直ぐ見た。目の前にいる犯人は、紛れもなく弟だった。最後に弟の顔を見たのはもう随分と前だったが確信した。そして絶望した。人を殺めて悦楽に歪んだ笑顔、どこを見ているのか分からない死んだ魚のような目、まさに狂人。忠告も虚しく、彼は持っていた銃の引き金を引いた。弾は一緒に来ていた相棒に命中。腹部を抑えて蹲る相棒。致命傷ではないが、このままでは危ない。視線を前に向ける。彼は───弟は次の獲物はお前だと言わんばかりに手に持った銃をこちらに向ける。こちらも引き金に指を掛ける。静止の声は届かない。ここで撃たなければ被害者が増えてしまう。相棒もこのままにしておく訳にはいかない。今この場に対峙しているのは自分だけ。応援が来る様子は未だ見られない。 俺が撃つしか、ないんだ──────。 どうやら弟とほぼ同じタイミングで銃を撃ったらしく、彼の撃った銃弾は弟の心臓を、弟の撃った銃弾は彼の右目を撃ち抜いた。 心臓の破けた弟に縋りついた。止めどなく溢れる血を必死に止めようとした。なんとか生きてほしいと、そう願って。 だが、現実はそう甘くない。彼の処置も願いも虚しく、あの子は逝ってしまった。自身の無力さをどれ程痛感したことだろうか。 後日、皮肉にも彼は、犯人が身内だったにも関わらず状況を冷静に判断し被害を最小限に押さえたという功績が称えられ警視庁刑事部捜査一課に配属される。零課への異動もこの事件があってのことだ。 またこの一件により警視庁内では"身内殺しの冷酷無慈悲な奴"という噂が囁かれ畏怖されることになる。 相棒は命に別状は無く、自身に礼を言ってきた。両親からは慰めの言葉を貰った。だが、納得いくはずがない。自分が欲しいのはそんな甘い、優しい言葉なんかじゃない。弟を殺した自分が感謝されるなんて、許されるなんて、そんなことがあっていいはずがない。自分にもっと力があれば、説得だってできたはず、弟は救えたはず、殺さなくたってよかったはずなんだ。 また一緒に、笑える日が来るはずだったんだ。 自分を許してはいけない。 『弟を、匠光を救えなかったのは─────自分のせいだ』 弟を殺した罪を償うために今日も生きている。 彼が人を救うのは、弟を救えなかった罪滅ぼしなのさ。 「元々一課所属だったが、まぁ……あまり期待はしないでくれよな」 「お前ら、怪我したら真っ先に俺に言え。面倒見てやるから」 「この傷があるから刑事やってんだ。傷作った奴に感謝しろよ？」 ※補足 右目を失っているため視角系技能に-15の補正が入る ★HO4の補足★ お花を育てていたのはセラピー効果があると医学書に書いてあったから。弟のように精神を病んでしまった人に会った際に助けになればと思い、仕事の傍ら花について勉強したり栽培したりするなどしていた。 誕生日:6/24 誕生花:バーベナ/弟切草 花言葉:魅力、団結/秘密、恨み 【通過シナリオ】 ・庭師は何を口遊む ・機械仕掛けの街(KPC) ・お前が人を殺すのだ ・深夜零時の秘め事 ・お前も健康にしてやろうか ・一場の春夢 ・惨歌讃劇 【AF】 ・健康的なレシピの本（使用時、ジャンクフード以外の料理限定で制作〈料理〉の判定に＋10） ・体に合う布団（使用して寝るとHP１回復） 【後遺症】 ・桜の木恐怖症(2年)

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