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あざみ　つばめ 27歳の図書館司書(薊圭吾の従妹・双子の妹の名前は雀女) いい人以外の何者でもない彼女。誰かに憎まれたこともないけど誰かに愛されることもない。そう望むことには疲れてしまった。めでたしめでたしで終わる物語なんてないのだから、もしも王子様が迎えに来てくれたのなら心中してしまいたいと思ってる。 死にたいわけじゃない。生きていたくないわけでもない。歪みなどなかったはずなのにある時から諦観ばかりが胸を埋めるようになった。それが堕天した悪魔のせいなのか、きっと誰にもわからない。 耳はいいので人の言葉を拾いやすい。でも心理学は持ってないのでその裏を読むことはできない。だから傷ついてしまう。そんな自分が全て悪いと思ってしまう。そんなことないのにね ＊ 幼い頃、お姫様に憧れた。ふわふわのドレスを着てガラスの靴を履いて、何があっても私を選んでくれる素敵な王子様が迎えに来てくれるのだと思っていた。 高校生の時、好きな人に呼び出された。告白だと思ってわくわくして…でもその人は選んだのは雀女だった。雀女と仲良くなるのを手伝って欲しい、と言われて私は頷いた。頷いてしまった。 従兄が恋をして立ち直って幸せになっていく。だから私もそうなりたかった。そうなれると思った。なのに、なんど恋をしてもうまくいかないと、優しい声で話す薬剤師さんに相談したら「心中してしまえばいいと思いますよ」と言われた。「幸せの頂点で幕引きすれば、それは「永遠」になるのかもしれませんよ」なんて。そうしたかったの。そうしたかったのに、気付いたら私を導いてくれた彼はいなくなっていた。 仕方がないのよ。私はツバメだもの。親指姫を王子様のところへ連れていって、幸福な王子と貧しい人たちを結んでそれで終わり。それだけで終わりの存在。お姫様だって王子様だって私のことは選ばない。私は手段でしかないってわかってる。 だから、もう恋なんかしない。永遠のめでたしめでたしなんて望まない。王子様の夢は見ない ＊ 『雀孝行』 - 「昔、燕と雀は姉妹であった。あるとき親の死に目に際して、雀はなりふり構わず駆けつけたので間に合った。しかし燕は紅をさしたりして着飾っていたので親の死に目に間に合わなかった。以来、神様は親孝行の雀には五穀を食べて暮らせるようにしたが、燕には虫しか食べられないようにした」 『秋物語』−「寂しがりの男の子をなぐさめていて、秋になっても南の国へ帰らず、凍え死んだお人好しのツバメを歌っている」 「おやすみなさい。私は、王子さまのいないシンデレラ姫。あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか？　もう、ふたたびお目にかかりません。」(太宰治「女生徒」より)

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