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伊野尾　翔(イノオ　カケル）1/30生まれ 特筆する事も無いような平凡な高校1年生。 幼少期から何が上手い訳でもなく、下手な訳でもない、よく言えば「卒なくこなせる」、悪く言えば「才能のない」そんな男の子だった。 そんな自分とは違い、兄の翼はまるで漫画の登場人物のようだった。勉強も出来ればスポーツも出来る。友達だって多いしいつも誰かに囲まれている。 兄の真似をして色々な事に挑戦したが、どれもイマイチ上達せず、兄を越えられるモノは一つも無かった。 「お兄さんに全部持ってかれちゃったのかもしれないね。」そんな事を周りの人達に言われたりもしたが、別に自分が何を言われようとどうでも良かった。それほどまでに翼が自分の兄である事が誇らしかったし、尊敬していた。憧れていた。 兄の大学推薦が決まった時は自分の事のように嬉しかった。「行きたかった大学、推薦決まった！」そう言った兄の笑顔は今でも忘れられない。これからも自分の兄は華々しい人生をそれこそ漫画の登場人物のように歩んでいくのだと思っていた。そう、母親が急死するまでは。 「兄ちゃんは大丈夫だからな！」それが兄弟2人で生きていく事を決めた、いや決めなければならなかった兄の口癖になった。 毎朝早く出て行って遅くに帰ってくる兄を出来るだけ心配させたくない、迷惑をかけたくない、だったら、こんな気持ちは言うべきではない、そうこんな「恋情」を持ってしまったことは兄に知られてはいけない。 ・自分の見た目を整えることにあまり興味がない為、前髪が異様に長く同級生は翔に暗い印象を抱きがち。(たまたま風が吹いた時に翔の顔を見たクラスメイトが「イケメンだった」という話を周りにしたが、見た目が根暗そうすぎて都市伝説になった) ・兄の翼がバレーに関して陰で並々ならぬ努力をしていた事を翔はそこまで知らない。「天才肌なんだ」「自分とは違うんだ」と思っている。 ・家庭科の授業が好きで中学生の頃はよく居残りをして担当の先生に裁縫を習っていた。なので大抵のものは繕えるし、一から服を作る事もできる。 ・早く家に帰って家事をしたい為部活動はしていない。委員会は図書委員会。要領があまり良くない為、アルバイトをするまでは未だ手が回らない。 ・自らが中学生だった為に(まだ公に働けなかった)兄の夢を断つ事になってしまったのをとても悔やんでいる。自分という存在が兄を生きづらくしているんじゃないかと負い目を感じている。 ・翔は小さい頃から翼の誇らしげな笑顔を見るのが大好きで、兄の出場する大会に足を運んでは、得点を決めた時にするピースサインと満面の笑顔を写真に収めていた。その写真の1枚1枚は同時に「僕のお兄ちゃんは最高にカッコいいんだ」「本当にすごいんだ」という気持ちを翔に与えてくれていた。憧れが歳を重ねるにつれ、形を変えていくことに薄々勘付いていたが、高校生活最後の大会(推薦の決定打になったであろう大会)で写真を撮り終えたときに、この感情が「憧れ」なんてものではなく、いつの間にか「恋情」になっていた事に気づく。 ＊・＊・＊・＊・＊・＊・ 「」なんてね・BADEND 兄がいたことを忘れる。兄は誕生日プレゼントにテーマパークのぬいぐるみ(くま)を残して消えた。 手元に日記代わりに付けていた家計簿は残っている。もう2度とこの場所(教会)に来るなというメモを家計簿に残す。

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