タグ： AZM

海も枯れるまで予定 実は同性愛者であり幼馴染の風見　暁（かざみ　さとる）のことを愛している。幼少期より彼と共にしていたが、いったいいつから彼を好きになったのかは定かではない。 しかし彼は異性愛者であり、この恋は絶対に叶わないということを自覚している。そのため愛情をひた隠し、なんでもない親しい友人を長年演じていた。 いっそ拒否されるとしても告白してしまおうかと思っていたこともあったが、幼なじみの家族以外で一番近い人間であるという立場が心地良くてずっと言えずにいた。 その幼馴染が大学から付き合い始めた子と結婚することになり、結婚式にて当然のように選ばれた友人代表スピーチをした帰りに海に立ち寄り…… 趣味技能 【精神分析】メンタルが弱いのを自覚しているため薬やリラクゼーションなど自分を癒す方法を独学で調べる。 【聞き耳】ゲイであることが誰かにバレるのではないか。そして噂されるのではないかという恐怖。 【目星】同上の理由より。 【応急手当】自傷行為を繰り返すがその後正気に戻り手当をする。 【人物背景詳細】 書店には天谷　圭太郎の新作とポップつきで本が平積みされている。客の一人がそれを手に取っているのを確認して俺は店を出た。 その本の内容は熟知している。なぜならその本の作者は俺なのである。 俺は新本格ミステリと呼ばれるジャンルの作家だ。 今回も印税が期待できそうだと、行き慣れたパチンコ店に入る。今日は憂さ晴らしに来た。 もし金が出来たらそれを明日、出席する結婚式の祝儀にするつもりだ。盛大に、祝ってやろうじゃないか。 スピーチを任された俺は、いまだ何を話すか迷っていた。なにせ本当は祝福の気持ちなどないからだ。酒を呑んで暴れて式を台無しにしてやりたいと、そんな気持ちを抱えながら十万を溶かして銀行の窓口にピン札を取りに行く羽目になる。 結婚式当日、俺は礼装を着て病院で整えた髪を撫でながら会場にいた。 学生時代の知り合いや、俺のツラに吸い寄せられた女の話し相手をしながら幸せそうな新郎新婦を遠目にする。 「ご結婚おめでとうございます。私は新郎の小学生時代からの友人で鈴屋累と申します。本日は彼を、親しみを込めて普段通りのサトルと呼ぶことをお許しくださいーー」 そんな書き出しのスピーチ文を読む。 俺は親友の人柄を語り、最後にもう一度カケラも気持ちのないおめでとうを繰り返した。 二次会もしっかり参加して、夢の国のペアチケットが当たってしまった。司会に「どんな方と行きますか？」ときらきらした瞳でマイクを向けられた俺は、「可愛い彼女から見つけないとですね、ははは」と笑うしかなかった。親友は「お前もフラフラしてないで、早く好きな人でもつくれよな！」とか言ってくる。 「お前は幸せそうでいいよなぁ？！」と言うと「当たり前だろ！」なんて小突かれもした。 無性に死にたくなった。 赤ワインをしこたま呑んだおかげで泥酔した俺は、嘔吐物で便器を赤く染めたりしながら帰路に着く。しかし気がつけば、俺は自宅ではなく海の桟橋にいた。 真夜中の海は墨汁のように暗く、吸い込まれるようだった。 20201205 海も枯れるまでEND8

※歌詞を引用、及び記載することは禁止となりました(Youtubeや歌詞サイトのURLだけ書くことをお勧めします)。
↑ページ上部へ