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2020.12.13　ロスト ＜サプリ2015特徴表(P.18)より「【5-5】おおらか」を採用＞ ・嫌なことをすぐに忘れられる。 ・精神科クリニックや療養所などでの正気度ポイントの回復が+1増加する。 ----------「頭を、撫でてくれたから」---------- ＜月匙 器(つきさじ うつわ)＞ 一人称：俺、僕、私 二人称：君、あなた、アンタ おおらかで穏やかな青年。誰に対しても基本、にこにことした笑みを浮かべている。 死ぬことに対し前向きだが、臆病なせいか約一年ほど自殺未遂を繰り返していた。一人ではどうしても死ねないと考え、自殺オフへの参加を決意。 身辺整理は可能な限り済ませてある。なるべく周囲へ迷惑をかけずに死にたいという心。 8年前から解離性健忘を患う。原因は妹の失踪、主に家庭環境によるもの。 しかし、具体的に何が起こったのかは未だ思い出せずにいる。正しくは何度も忘れている。 大切な妹がいたこと、自分は何もできなかったこと、彼女に何か謝られたこと。なんとか思い出せたのはその程度。 自分の周りに何が起こったのか、それを調べるために探偵業をはじめるが、真実に辿り着く度に何かに絶望し、悩み苦しんではまた忘れる。 「知ることすら許されないのか」と笑う頃には、この仕事でそれなりに食べていけるようになっていた。 自分は恵まれた環境に身を置き、幸福である。人々を幸福にするために、生きなければならない。 自分は都合の悪いことを自分の為に忘れてしまう、醜悪で身勝手な人間である。人々へ害を与える前に、死ななければならない。 1～2年前に事故に遭い入院。その際に自分の精神的限界を悟り、自殺の意思が芽生える。 ＜--＞ どうして覚えていられないのだろう。大事なことのはずなのに、ひび割れた器からは、すべて零れ落ちてしまうらしい。 そうして息をして、また何かを忘れて。思い出したときには何もかも「過去」になってしまっていた。 話がしたかった。あの子に会いたかった。 額をぶつけて静かに「ごめんね」と言った、覚えのない、知っているはずの声。 思い出が何一つ残っていなくて、それが、自分があの子を自分の為に殺しているようで、悲しかった。 「"今は"つらいだろうけど大丈夫」「悲しいことばかりじゃないわ」「忘れてしまうのは、あなたがあなたを守るために頑張っているから」。 わかっています。自分は恵まれている。簡単に死んでいいわけがない。生きなきゃいけない。 だって勝手すぎるじゃないか、もっと苦しんでいる人たちがいるのに、生きたいと願う人たちがいるのに。 また、忘れてしまう。殺してしまう。そのことすら、忘れて、また。 忘れてしまうことは、仕方ない。きっと、生きるために必要なことだから。それに、誰にも迷惑はかかっていない。全部、自分の中の話。 苦しいのは、中途半端に覚えている間だけ。忘れたら、また。 幸せな日常に戻るんだ。 その日は運が悪かった。 交通事故、かな。目の前が真っ赤に染まって。心じゃなくて身体が、痛くて、苦しくて。 死ぬかと思った。死にたかった。怖かった。死ねたらよかったのに。ごめんなさい。 救急車のサイレンが遠くで聞こえてきて、なんでだろう、昔、どこかで聞いた気がする。思い出せない。 ああ、でも、ただの思い込みかな。また、忘れてしまうんだろうな。寂しいな。 とにかく、その日は、運が悪かった。 「生きていてよかった」「ありがとう」「頑張ったね」「本当に、目が覚めてよかった」。 家族、友達、先生まで、色んな人が会いに来てくれた。笑わないと、生きていてよかったと言わないと、皆を悲しませてしまう。 泣きたかった。泣かせて欲しかった。死にたいと願った自分を、責めて欲しかった。ごめんなさい。自分の為に生きられなくて、ごめんなさい。 事故を起こした運転手は亡くなったらしい。助かったのは、自分の方だった。生きないと。 「あなたが助かってよかった」と言われるような人に、ならないと。いきないと。 そういえば、事故のこと、運転手さんのことも、そのうち忘れてしまうのだろうか。また殺してしまうのだろうか。せっかく、助かったのに。 自分の為に、このベッドが使われている。早く元気になろう。 月の光が眩しくて、目が覚めた。 深夜の病室を抜け出して廊下を歩く。どんな理由でもいい、誰かに叱って欲しかったのかもしれない。 若い看護師に会った。寒い廊下で、自動販売機から出てきたココアをくれた。あたたかい。 そういえば、お礼、ちゃんと言えたっけ。 それから、しばらく話していると世間話に花が咲いて。こちらをじっと見つめた彼がまた口を開く。 彼も、大事なことを忘れてしまったことがあるらしい。 尋ねれば、ありのままの言葉を返してくれた。淡々と、嘘のような本当の話を、聞かせてくれた。 叱られることはなかった。慰められることもなかった。 その人は、ただ、頭を撫でてくれた。 理由は分からない。けれど。 本当に勝手だけど、何かを赦されたような気がした。気が付けば泣いていて。 退院の日、見送ってくれたあの人へ、心からの笑顔を向けた。そうしたいと思った。 あの時。 もう、"だれもころさなくていい"と思わせてくれた、その温度が、嬉しかった。 最後まで自分勝手でごめんなさい。 誰かの分まで生きられるほど、俺は強くないです。 もし、自分のように一人で死ぬ勇気がない人たちがいるなら、一緒に死にたいな。 最後の、人助けが出来たら、嬉しいな。 ＜願い＞ 妹に会いたい。あの子の頭を、"もう一度"、撫でてあげたい。 ＜関係＞ ・月匙 雫(つきさじ しずく)　/？歳/「--」 行方不明の妹。彼女の名前も、何も、思い出せない。 ＜技能＞ ・【応急手当】50……「誰かが怪我をしたとき、手当てが出来たらいいなと思って」 ◆【聞き耳】85……「知りたかった」 ・【忍び歩き】35……「こういう仕事だから、ちょっとは必要かなと」 ・【追跡】70……「猫探しは割と得意でしたよ」 ◆【図書館】80……「情報収集は大事だからね」 ◆【目星】85……「本当に見えていたのかなぁ」 ・【説得】45……「話をしてもらえたら、嬉しいんだけど」 ・【芸術(スケッチ)】10……「なんとなく……？」 ◆【心理学】70……「何か知りませんか？」 ＜解離性健忘＞ 心理的に外傷的な体験やストレスに満ちた体験に耐えたり，目撃したりすること（例，身体的または性的虐待，レイプ，戦闘，集団殺害，自然災害，愛する人の死，経済的問題），または大きな内的葛藤（例，罪悪感を伴う衝動による混乱，明らかに解決不能な対人関係の問題，犯罪行動）により引き起こされると考えられる。

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