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【クオリアじゃない世界線の日葵】 3歳の頃に父が他界。落下してきた機材に貫かれ死んだ。日葵はまだ小さかったため、父のことをあまり覚えていない。ただとても優しくてあたたかい手だったことは感覚として覚えている。 最愛の夫を亡くしてしまった母は鬱のようになり、まるでその場に父がいるかのように生活する日々が続いていた。「おとうさん、いないよ？」と言えば何を言っているのかと怒鳴られた時もあった。 そんな母を見てきたせいか、「自分も誰かを愛したりして大切な人ができて、その人を失う時が来たら苦しいのではないか。」「愛するのが怖い」「だったらずっとひとりで…」と考えるようになった。 その結果、学校でもどこか壁を作ってしまい、友達がいなかった訳ではないが必要以上に仲を深めようとしなかったし恋愛もしようと思わなかった。 告白されたこともあったが断ってきてた。 そんな生活を送ってた中学2年のある日、 男性に誘拐され洋館に監禁されるという出来事があった。 知らない男性に誘拐された上「俺の初恋を叶えてくれないか？」と言われ怖くて震えたが、彼はどこまでも優しかった。 不思議で仕方なかった。どうして傷ついてまで私を守るのか。どうして時折迷子の子供のような悲しい目をするのか。 それは彼が未来の夫だったから。未来で結婚を前に事故死した私を助けようと奮闘し、とうとう出会う前まで時を遡ってしまったらしい。 誘拐されて3日目、突然炎に包まれた館。彼がここで死なないと日葵の死が確定していた。 「どうか俺の初恋を奪ってくれ。」「愛してる、日葵」と、瀬戸拓水は指輪を託して日葵を突き放し炎に消えていった。 たった数日の初恋。 ずっと恐れていた"愛する人を失う"という事に苦しんだ。けれど彼が教えてくれた愛はとてもあたたかくて切ない程に優しかった。 再び日常に戻った日葵は、相変わらず人との壁を作ってしまいがちではあったが、「この世界の俺が、必ず日葵を幸せにする。絶対に会える。」という未来の彼の言葉を信じつづけていた。 きっと拓水がまたいつか、愛することは怖くないってことを教えてくれると、見つけてくれると確信にも近い感情をもっていた。 2年の月日が経ち高校1年生、 同じクラスになった男子生徒と挨拶を交わす。 「初めまして、瀬戸拓水だ」 日葵が2度目の初恋に歩みだすのはもう少し先のお話。 〈アーティファクト〉 『未来の婚約指輪』 あなたと拓水のイニシャルが刻まれた銀の指輪。持っているとあなたの幸運に+10の補正がつく。あなたが誰かと正式に婚約、結婚するとその効果は失われる。 いつかあなたを守る人が現れるまで、あなたを守る指輪。

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