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KP - 今日 22:22 ●大司教の日記 私は今でも昨日のように思い出せることがある ――――三十年ほど前、異教徒のある女性を愛してしまった。 彼女が信仰する神と私の信仰する神は異なり、異教徒同士が結ばれることは神の掟に背くもので、許されることではなかった。 私は神を捨てることはできなかった、だから彼女と会うことをやめたのだ。 会わなくなってどれほどの時間が過ぎたのか、ひどく長く感じられて、そう長くはないのに何十年もの時を過ごしたような気さえする。 私にとって彼女は大きな存在だったのだ、忘れるように仕事に身を入れただひたすらに鍛錬に励んだ、彼女を選ばなかった私にできることはただ神の教えを説き身を任せることだけだったからだ。 そんなある日のことだった、あれは大雪の日だ。 教会の扉を叩くものがいた、扉を開ければ彼女がたっていたのだ。 しばらく会っていないがすぐにわかった、私は彼女にずっと会いたいと思っていたからだ。 ボロボロの体になった彼女は私を見た瞬間雪の中倒れてしまい、急ぎ彼女を教会の安全な場所へと案内し手当を施そうとした時だ―――彼女の手に収められていたものを見た。 それは赤子であった。赤子と呼べるのかもわからない醜さを身にまとい奇怪な姿をしたそれを見たとき、私は言葉を失った。 うわごとのように彼女が何かを求めるように探しているのを見て、私はすべてを悟ったのだ。この子は彼女の子供なのだと。 何がどうすればこのような醜悪な姿をして赤子が生まれてくるのか、私にはわからなかった。ただ、彼女にとって大切な子供であることだけはわかったのだ。 ずっとうなされている彼女の手を握ればそれはあまりにも弱弱しい手だった あの時彼女の手を取っていたのなら彼女はこうはならなかったのだろうか？ そんな考えさえ一瞬よぎってしまう。 祈るように彼女の手を握り介抱をしてしばらくの時間を過ごせば彼女はようやく目を覚まし私の顔を見て、涙を浮かべた 「名前はフレデリクというの...」 「こんなこと頼める立場ではないけれど...この子のことをお願いね」 「この子を、どうか見守ってあげて」 その言葉を最後に彼女は目を閉じ、もうその目が開かれることはなかった。 目の前の子は醜く、普通に生きていくことは難しいだろう。 けれど私は彼女の頼みを断ることはできなかった。だからこそ育てようと決めたのだ。 彼女の事情も、誰の子なのかもわからぬ異形の子であれど愛する者の愛した子であるならば守ら ない理由は私にはなかった。 私の子ではない異形の子―――けれど年月が経つにつれて、愛おしく思える。 私を父と慕ってくれるあの子に母親のことをいつか話すことができるだろうか... ただ幸せでいてくれるなら...それだけが私の望みだ。

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