タグ： 音火(ねこしぃ)

（職業は6版るるぶ 国内でも有数の進学校に通う高校２年生。部活は元美術部。 成績は学年トップ、運動もそつなくこなせる才色兼備。出る杭は打たれる、才能は嫉妬を産む、と言うが、彼女の場合はそれに当てはまらない。穏やかな性格で誰に対しても優しく、困っている人を放っておけない。悩みとは無縁そうで、教師陣からは将来有望だろうと期待されている。 ──彼女に対する周囲からの認識は、それが全て。 小学生の頃、彼女は足が早くて頭も良かった。 クラスの中心人物で、いつも友達に囲まれているような女の子。 元々、人が喜ぶ姿を見るのが好きだった。 テストでいい点を取れば、大好きな両親が喜んでくれる。 運動会のリレーで一番になれば、クラスメイトの子たちが喜んでくれる。 クラスのために、積極的に動けば先生たちが喜んでくれる。 彼女の行動原理は、大切な人たちの喜ぶ姿が見たい、ただそれだけだった。 絵を描くことも好きだった。特に風景の絵。色とりどりの絵具を使って描いた絵が周囲からすごいねと言ってもらえることが好きだった。 高校生になり、進路の話になった。 彼女は看護師になりたいと思った。それが自分にとっての天職だと思ったから。 それを両親に話した時。 母は、｢看護師も素晴らしい職業だと思うけど、蘭の成績なら医者の方がいいんじゃないかしら｣と言った。 父は、「医者の方が看護師以上にすごい仕事だ。蘭にぴったりの仕事だ」と言った。 「医者になるなら、今以上に勉強しなきゃダメね」 「じゃあ、部活は辞めて勉強に集中しなきゃな」 「医者の娘だなんて、蘭は自慢の娘よ」 「ああ。父さんも鼻が高いよ」 そう言われて。彼女が返した言葉は。 『…わかった。私、頑張って立派なお医者様になるね』 矢吹蘭という少女は。他人本意に生きてきてしまったせいで、自分が分からなくなった。何が自分にとって楽しいことなのか、何が自分にとって辛いことなのか。両親に言われた通り部活も辞めてしまった。あれだけ好きだった絵は描けなくなってしまった。好きな色は何だったか、忘れてしまったから。 自分が分からない。矢吹蘭はどこにいるの？私は一体誰なの？ 誰に聞いても答えてもらえない。彼女は終わりのない問いの海の中で、ずっとずっと、沈み続けている。 一人称：わたし 二人称：きみ

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