タグ： aconite あるままん

彼がマフィアとなったのは、それ以外に生きる道がなかった故である。 彼の父は軍人で、パインリッジ戦役にて殉職。彼は幼くして父を亡くしてしまった。 当時は女手一つで子どもを育てるのがとても難しい。当時の女性には政治的平等権もなく、またそれを得る運動が盛んになっていたことにより、男性社会の中で女性の信頼が得づらかったためである。そこで母親は、このまま共に死を待つのでは希望もないと悟り、子を捨てる覚悟をした。『どうか優しい人間に育てられて欲しい』と願いながら。 それを拾い育ててくれたのが、”ピンチャーファミリー”である。 まだ当時はマフィア同士の抗争が繰り返されていて、決して生き残ることは楽ではなかったであろう。同じように拾われた子どもの中でも死んだ子どもは少なくなかった。 可能性の目を詰むために、敵組織から狙われることも少なくなかったためである。彼が15になる時には、死にかけた事も片手では数えられなくなっていた。 父が軍人だったという血統の為か、身体能力には恵まれていて、それを回避することができていたのが不幸中の幸いか。 子どもを殺すという目的のためか、まだ経験の浅い若い人間が送り込まれていたのも彼が生き残った理由と言えるだろう。もしベテランの人間が狙いに来ていたのであれば、彼はとっくに死んでいる。 そうして年を重ねてからは、彼はボスにまで信頼される人間となっていた。 そのボスが子を成してからは、その護衛として抜擢されるまで上り詰めた。

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