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愛書家 <図書館>+20% ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 物心ついた頃には､もう父上は居なかった｡ 母上は規律に厳しく､少しでも規律違反をする様なら躾と称して暴力を振るった｡ 母上は､出て行った父上に見向きすらしなかった｡ 幼少期から〝貴方は医者になるのよ､立派な医者になりなさい〟と言われ続けて､母親の理想に近付こうと幼い頃から努力した｡ 努力して､努力して努力して努力して､それでも幼い自分には結果なんて残せなくて｡ 結果が残せない駄目な自分に､母上は失望した｡ 沢山叩かれた､殴られた､蹴られた､痛かった｡ でもそれ以上に心が痛かった､苦しかった｡ 当時8歳の時だった､この頃は母上が絶対だった｡ だから､二度と失望させないと心に誓ったのだ｡ 母上が敷いたレールの上を､ひたすらに走り続ける｡ 医者になる､と言うゴールを目指して､止まる事なく走る､走る走る走る｡ 走って､走って走って走って走って､足が痛くても辛くても走って走って走った｡ 甘いケーキ？そんなの生まれて一度も食べた事ない｡ 目標摂取カロリーを計算されて､食べる物を制限されて､それでも失望させないようにずっと我慢してたのだ｡ 甘いケーキは馬鹿が食べる物､甘い物は馬鹿が食べる物､そうやって母上が言ったのだから､そうに違いない｡ でも､ケーキ屋で見掛ける宝石の様な艶のある真っ赤な苺のタルト､一度で良い､一度で良いから食べてみたい｡ そう言えば､祖母が存命していた頃､一度だけ隠れて食べた金平糖､あれは美味しかったな｡ あの後､母上にバレて祖母は母上と大喧嘩して､祖母が怪我をしていたのは鮮明に覚えている｡ 然し､その後祖母は体調を崩し､そのまま帰らぬ人となった｡ 祖母の形見の髪結紐､持っていると母上が嫌な顔をする｡ だから祖母の形見は大事に巾着に入れているのだ､無くなると困る｡ 最近になって､母上の言い分が正しいのかよく分からなくなって来たのは事実である｡ 故に､本当に医者になる事が自分の､我のゴールなのか､それが分からないのだ｡ 我は自由が欲しい｡ 籠の中はうんざりだ｡ 我の為にと宛てがわれた鳥籠はもう狭苦しい｡ 母上､すまない､我は貴女の望む息子にはなれなかった｡ 然し､母上の操り人形の様に生きて行くのも嫌だ｡ お祖母様､我は少しだけ我儘に生きていこうと思います｡ 天国で､我を見守っていて下さい｡ イメージソング：ジェヘナ イメージカラー：蜜柑色 カラーコード：# F08300

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