タグ： つわぶきやすは 無記名の観客席

「飛鳥。おはよう、今日はなんかあるの？」 「バグ修正を頼まれたのに、私の担当外してから“バグが減った”だって。こっちの仕事内容、ちゃんと把握してないんだろうな...」 「新車買ったけど....よく考えたらそんな、自分から外に出ないな...」 ───────────────────────── 虚弱体質のインドアゲームデバッカー。 幼い頃から室内遊びを好み、“今日もごめんね、良い子でいてね”と言う両親から与えられたゲーム機を存外気に入り、趣味が高じて職業になった、というところである。 そうそう怒ったり感情的にならない人物で、これは本人が優しかったりするのではなく単に“面倒くさい”から。鬱憤や苛立ち・承認欲求(主に両親への)はもちろん人並みに覚えるが、それを公にするのが億劫だと考えている。それ故か、ある意味“異常に我慢強い”。 このお陰/所為で、インフルエンザやどうしようもない程隠せない場合にのみだけ、幼少期は姉である飛鳥の方に両親を向かわせていた。(バレていたかもしれないが、それはそれで自分は後だと無理を言った筈だ) 傍目からはかなり控えめな、我が儘を言わない淑やかな子供に見られていただろう。 しかし、そんな己も姉に次いで体が丈夫な方だとは嘘でも言い難い。なので、それを改善する為に昔から父と母に連れられ病院に行っているものだと思っていた....が、今思えばそうではないのかもしれない。 両親亡き今、最早問い詰められる相手はいない。 飛鳥にも秘密の処方をされていた自分は、何か知らぬ病気を抱えていたんだろうか。少なくともこの歳まで問題無く生きてこれているのだから、医者と親は自分に悪影響ないし、後ろめたいことはしていないのだろう...と考えている。 本人からして、一等仲が良いという訳ではないが双子であるし家族であるので、飛鳥へ人並みより少し多めの親愛は持っている。 だが、憎悪─と呼称するにはやや歪んでいる、深く渦巻く執着に酷似したものをこの頃感じている。姉を見ていると無意識に奥歯を噛み、眉間にシワが寄るのだ。何故？とは鳩葉も疑問に感じている。 『自覚したくないだけなのかもしれないね。どうせ面倒だからなんでしょ』...。 近頃、親が唐突に死去したことに並び、その事故に飛鳥が巻き込まれたとあって蚊帳の外であったという事実に様々な考えが頭をよぎっていた。 一緒に行けば良かった、いや行かずに何か出来ていれば、これからどうすれば、嘘だそんな死ぬには早すぎる......流石の鳩葉も応えているからか分からないが、随分と夢見が悪い。ので、一先ずネットでポチったドリームキャッチャーを身につけてみることにした。 これも単純に生活習慣を治したりできない、現状への多少の気休めだ。あと最近デスストが面白かった。 「飛鳥、シートベルトつけた？あ、あと特にかけたいのなかったら感電流していい？ありがと」

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